高橋一生と中村倫也が繰り出す、異なるアプローチ 『凪のお暇』で生まれた相乗効果

 思えばこれまでに両者とも、“変わり者”と呼べるキャラクターを多く演じてきた。高橋の近年の出演作でいえば、民放のプライム帯連続ドラマで初主演を飾った『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系/2018)や、川口春奈とW主演を果たした『九月の恋と出会うまで』(2019)などの作品での姿が思い起こされる。前者では少年のように好奇心旺盛な大学講師を、後者では小説家志望の不思議な青年を演じた。どちらもほのぼのとした空気を作品に与える存在だが、間もなく封切られる『引っ越し大名!』では豪快な人物に扮しているので注目である。

 そして中村はというと、今作『凪のお暇』と同じく、微笑がよく似合うマイペースな男を多く演じてきた。中野量太監督の待望の最新作『長いお別れ』での好演も記憶に新しいが、やはり昨年の朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合)で演じた“マアくん”役が、今作のゴン役に近い。マイペースで、打算なく周囲の者たちをサラリと虜にしていく姿は、ほとんど同タイプのキャラクターだと言えるだろう。しかし、『孤狼の血』(2018)や、間もなく封切りとなる『台風家族』ではアウトロー(!?)に扮している。ゴンは、原作を読む限りつねにゆったりとしたキャラクターだが、今後のドラマ展開によっては、彼がアツい姿を見せる瞬間があるのかもしれない。ついそんな期待をしてしまう。

 新たなハマリ役を得たように思える高橋一生と中村倫也。彼らが演じる我聞とゴンの、一人の女性をめぐる言動の違いにも注目だが、凪の人間的な成長に合わせて、このアプローチ違いの演技対決を楽しみたい。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

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