『ガッチャマン』映像化作品も始動 MCU成功の立役者、ルッソ兄弟の功績と作風を分析
2014年、マーベル・スタジオのヒーロー映画に、突如として驚くべき傑作が誕生した。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』である。これは、派手なアクションが連続して描かれるヒーロー映画でありながら、ポリティカル・サスペンスとしても楽しむことができる異色作だ。これが画期的だったのは、キャプテン・アメリカを含めたヒーローたちをサポートする正義の組織「S.H.I.E.L.D」にまつわる衝撃的な展開が描かれている点だ。
この作品において内容的に大きな成功を収め、以後、それに続く『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)、さらにマーベル・ヒーロー集結作品『アベンジャーズ』シリーズの最終2作である『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)と、立て続けに重要作をまかされ、これらを見事に完成させたのが、アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ、通称「ルッソ兄弟」監督である。
ここでは、そんなルッソ兄弟の映画作品における功績を振り返りながら、彼らの根っこにある作風と、これからの取り組みについて考えていきたい。
彼らが初めて監督をしたのが、『Pieces(原題)』(1997年)という、大学院生時代に自主制作したコメディ映画だった。映画祭でその才能にいちはやく目をつけたのが、ともに映画製作を行っていたスティーブン・ソダーバーグ監督と、俳優ジョージ・クルーニーだった。
ソダーバーグとクルーニーの製作作品において、商業映画の業界に足を踏み入れたルッソ兄弟が撮ったのが、『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』(2002年)である。これは、サム・ロックウェル(『バイス』、『スリー・ビルボード』)主演の犯罪コメディ映画だ。
『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』は、ソダーバーグ監督、クルーニー主演の『オーシャンズ11』シリーズのように、犯罪をたくらむ者たちが集結して大金を盗み出そうとする作品だが、この作品が『オーシャンズ11』と対照的なのは、登場人物たちが貧困にあえぐ冴えないダメ人間ばかりであるという点だ。
オハイオ州クリーブランドにある労働者の街、 コリンウッドを舞台に、ケチな盗みを繰り返しては逮捕される貧しいコリンウッドの人々が、大きな儲け話があると聞いて、どん底人生から脱出するべく、金庫破りの仕事に集まる。それはある意味で、ひどくケチな奴らが集結した、最低の『アベンジャーズ』といえるかもしれない。