『鬼滅の刃』は劇場アニメに匹敵するクオリティに? 『Fate』シリーズと共通する“愛”の表現
このあたりは2019年1月に第2章が公開された『劇場版Fate/stay night[Heaven's Feel]』シリーズを連想させる。どちらの作品も、人の四肢の損傷などのグロテスクな表現を単に気持ち悪く、怒りを煽るように描くのではなく、どこか美しさや物悲しさを感じさせるように表現する。残酷な描写を美しく描くことによって、対比として、家族愛や異性愛を引き立たせているのだ。
また映像においての挑戦として目を引くのが、主人公である炭治郎の太刀筋の表現だ。本作では必殺技の太刀筋の表現に水のエフェクトが使われており、『Fate』シリーズに共通するリアルな表現というよりは、浮世絵や漫画などの表現を意識していると見受けられる。CG技術の発達もあり、リアルで写実的なエフェクト作画が多く見られる中で、“絵が動く”アニメだからこそ表現でき、強く印象に残る表現を成立させている。今作は大正時代を舞台としており原作も和の雰囲気を強く打ち出している作品だが、その世界観の魅力を強く印象づける1つの要因になっている。
音楽面でも注目のポイントが多い。多くのアニメ作品の世界観を支える音楽を作り上げ、高い人気の誇る梶浦由記が、椎名豪とともに音楽を担当している。さらに梶浦の楽曲には、過去に音楽ユニットSee-Sawで共に活動していた石川智晶も制作に加わっている。石川が近年多く手がける民族的な音楽と、梶浦の荘厳な音楽が合わさることによって作品により重みと独特な雰囲気を作り上げることに大きく貢献をしている。
本作の中でもシリアスな一面にフォーカスを当てたが、少年誌に連載されている作品らしくコミカルな要素もある。1クール目の前半はシリアスな面が目立ったが、単に重い、辛いだけの作品ではなく炭治郎以外にも強く印象に残る魅力的なキャラクターが多数登場する。多くの方に楽しんでもらえる作品となっているので、ぜひ視聴してほしい。
■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。
@monogatarukame
■放送情報
『鬼滅の刃』
TOKYO MX、群馬テレビ、とちぎテレビ、BS11ほか【全20局】にて
毎週土曜23時30分~
原作 :吾峠呼世晴(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督 :外崎春雄
キャラクターデザイン :松島晃
サブキャラクターデザイン :佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
脚本制作 :ufotable
コンセプトアート :衛藤功二、矢中勝、竹内香純、樺澤侑里
撮影監督 :寺尾優一
3D監督 :西脇一樹
色彩設計 :大前祐子
編集 :神野 学
音楽 :梶浦由記、椎名 豪
制作プロデューサー :近藤 光
アニメーション制作 :ufotable
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable