麒麟・川島明が“理想の上司”に 『なつぞら』東洋動画を支える低音癒やしボイス

 『なつぞら』(NHK総合)では、いよいよ宮崎駿を彷彿とさせるアニメーター・神地航也(染谷将太)が登場。坂場一久(中川大志)とヒロインのなつ(広瀬すず)も新たな短篇映画の制作に動き出している。昭和のアニメーションの原点であり、日本のアニメーションの歴史的な瞬間を目の当たりにしているような、ドラマの世界を超えた楽しみ方がこの作品にはあるようだ。

 なつが兄の咲太郎(岡田将生)を探すために上京し、初めてアニメーション制作会社を訪れたときから異彩を放つ存在だった川島明演じる動画担当の下山克己。なつは仲努(井浦新)から元警察官で彼も薪割りの絵を描くテストをしたと紹介されていた。下山のモデルと思われる大塚康生は、実際は元厚生省の麻薬取締事務所の補助職員をしていて、アニメーターになるために少年が槌を振り上げて杭を打つ絵を動かすテストを受けたそうだ。

 川島明といえば麒麟のボケでネタ作り担当。低音ボイスの響きが印象的だが、その演技には優しさがにじむ。

 なつと森田桃代(伊原六花)のカラフルなコーディネートを毎日スケッチしていた下山。先述した大塚も小学生の頃から蒸気機関車をスケッチし、戦後はジープを克明に描くなど、気になるものがあると描かずにはいられなかったようで、やはりなつのモデルの1人と思われる奥山玲子のこともスケッチしていたという。

 下山は、今まで同じ組み合わせの服を職場に着てこなかったなつが初めて同じ服の組み合わせで出社したことで、すぐに何か事情を抱えていることを察する。このシーンも実にさりげなく話しかける。なつは、自分のことではなく下宿しているおでん屋のお客さんの話として、生き別れになった妹・千遥(清原果耶)について下山に語っていたが、千遥が柴田家に訪れた際には、下山はすぐになつの事情を察し職場を送り出す。相手が明らかにしたくないことには深追いはせず、ためらっているときにはぽんと背中を押してくれる。何気ないやり取りのシーンの中に、下山の人柄がよく表れていた。

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