『あなたの番です』特別編、原田知世は誰に怯えていた? 「反撃編」に向けた重要な物語に

 先週、菜奈(原田知世)の死という衝撃的な展開によって幕を閉じた日本テレビ系列日曜ドラマ『あなたの番です』の第1章。いよいよ次週から始まる「反撃編」と銘打たれた後半戦に向けて6月23日に放送された「特別編」では、これまでの“交換殺人ゲーム”の動きを刑事の水城(皆川猿時)と神谷(浅香航大)の2人が整理していく視点と、菜奈の日記を見つけた翔太(田中圭)が2人の思い出をめぐっていく視点という対照的なふたつの物語が交錯していく。果たしてこれは単なる“おまけエピソード”に過ぎないのか、それとも後半戦につながる重要なヒントが隠されているのか。

 菜奈の葬儀から帰り、独り残された302号室のリビングで佇む翔太。突然「諦めたらそこで試合終了」という、『スラムダンク』の名台詞を語る菜奈の声で目を覚ました翔太が遡っていく回想シーンは、どういうわけか同作へのオマージュであふれていた。翔太が菜奈へ告白するたびに断られ、それでも諦めずに告白しつづける点は桜木花道のようでもありつつ、翔太が元バスケ部員で菜奈もバスケ部のマネージャーだったということを考えると宮城リョータと彩子のようにも思える。それに加え“諦めが悪い男”という三井寿を示す言葉もしかり。無論、『スラムダンク』にミステリー要素は皆無なだけに、無関係なようにも思えるのだが、念のため頭の片隅に置いておきたいところだ。

 もっとも、この回想シーンに登場した“ミステリー要素”に繋がりそうな部分といえば、第2話の中で触れられていた「ラストで犯人が花火でバラバラになる」という翔太のおすすめ小説が江戸川乱歩の『パノラマ島奇譚』であることと、菜奈と翔太が推理する時に使う“オランウータンタイム”がエドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』から来ているということが明示された点だろう。

 直接的に本ドラマに関わる部分ではないにしろ、ミステリーの古典とも言える両作から踏まえれば、本作に隠された“謎”もいたってオーソドックスな視点で見つめることを勧められているような気がしてならない。それは90年代の定番ともいえる、五十音順に並んだ言葉を数字に置き換える暗号解読方法を菜奈と翔太が出し合うシーンからも感じ取れる部分だ。しかし、このように古典的な謎解きの方法論を携えた翔太と、次回から登場する新たな住人の二階堂(横浜流星)が扱うAIという対照的な捜査方法が手を組むという「反撃編」のプロット。まるでオールドファッションなミステリーが、いかに現代に馴染むのかを試すという挑戦的な意味合いが込められているようにも思える。

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