「無名新人」なぜ主役に? 視聴者と作り手に刺激をもたらす“新たな原石”に注目

 石井裕也監督が手掛ける映画『町田くんの世界』において、主演をほぼ演技未経験の新人・細田佳央太と関水渚の二人が務め、話題を集めている。

 主人公・町田くんの母親には松嶋菜々子、主演二人を取り巻くクラスメートや同学年、後輩には前田敦子や岩田剛典、高畑充希など、主役級キャストを多数配置し、太賀や池松壮亮などの演技派が絶妙なスパイスを添える。脇を華のある役者や、個性派・演技派などの豪華キャストで固め、真ん中で無名新人が瑞々しくのびのびと演じるのは、一つの理想的な構図でもある。

 殊にこの作品の場合、主役の町田くんは、あまりの優しさ・善良さから「キリストって呼ばれてる」一方で、「ああいうヤツが事件起こすんだよ」などと陰口をたたかれてしまうほど、理解不能な異質な存在だ。ありえないほど純粋で、浮世離れした町田くんは、「普通」なのに浮きまくっている。そんな純粋さと違和感が、一生懸命に不器用に全力で真っすぐぶつかっていく新人・細田に、ピタリとハマっている。

 ヒロインを演じる関水もまた、意志の強さや孤独を漂わせる強い目ヂカラが印象的で、登場したばかりの頃には、傷を負った野生の動物のように見えた。しかし、「恋」を知ってしまってからは挙動不審になり、意味のわからない苛立ちを見せ、不格好な振る舞いをする一方で、それがどんどん可愛く魅力的に見えてくる。間違いなく役とともに作品の中で変化していっているのが見えるにつれ、観客も彼女の感情に巻き込まれていく。

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