巧か、晃太郎かーー『わたし、定時で帰ります。』が突きつける“結婚相手”としての究極の選択
種田晃太郎
結衣と巧が温かな家庭料理を堪能している頃、コンビニ弁当を口に運びながらパソコン作業をしているのが、晃太郎。仕事がデキる、社内でも一目置かれる存在だ。
晃太郎と結衣が婚約を解消したのは2年前。自身の父が仕事人間だった結衣には、両家顔合わせをすっぽかし、「仕事と私との結婚、どっちが大事なの?」という問いに「仕事だよ」と答える晃太郎との幸せな結婚生活を思い描くことができなかったのだろう。
だが晃太郎が結衣の上司になったことで、これまで結衣には見えていなかった晃太郎の一面があれこれ見え始める。待っているだけの“彼女”ではわからなかった仕事ぶり、責任感の強さ、そして、自分を追い詰めたブラック上司・福永(ユースケ・サンタマリア)さえも裏切ることができない、優しく弱い人間であること。これでは、もともと未練がなかったとしても、新たに晃太郎に恋をしてもおかしくない。というか、あんな上司、好きにならないほうが難しいとさえ思えてしまう。
アスレチックやボルダリングデートで、結衣に「やっぱスポーツ向いてない」と言わせる巧と、さりげなくフットサルに誘い、結衣の心からの笑顔を引き出す晃太郎。こう対比してしまえば晃太郎に軍配が上がるように思えるのだが、恋愛と結婚は別モノ。もしも子どもが生まれたとして、残業に休日出勤でワンオペ育児が決定的な晃太郎と、家族の時間をしっかりと確保するであろう巧。どちらと結婚するのが幸せかという問いは、愚問だろう。でも、でも、晃太郎を支える人は必要だし、他の女性に渡すのはしゃくである……女って、本当にワガママだ。
と、ここまで巧と晃太郎について語ってきたが、“プライベート優先=理想の結婚相手”という点に囚われすぎて、巧に自分の意見を言わない結衣にも問題がないわけではない。“仕事人間とは結婚しない”という信念を貫くため、巧ときちんと向き合うことをせずに、結婚の道を選ぼうとしている気がしてならないのだ。第7話では「私が好きなのは巧だからね」と、自分に言い聞かせているようにも見えた結衣。巧か、晃太郎か。この究極の選択に、彼女はどんな決断を下すのだろうか。
■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。5歳・7歳の息子を持つ2児の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter
■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/