『スケート・キッチン』NYのガールズスケートクルーが考える、“女性のためのホーム”が必要な理由
「自分が何者か、忘れてはいけない」
ーースケートパークで男の子と対立するシーンもありましたが、ああいうことはよくあるんですか?
ジュールズ:映画の中だと、男の子と女の子が対立しているけど、実際は友達同士のスケーターが多いから、あからさまに嫌がらせをしてくることはそんなにないです。どちらかというと、違う仲間同士、男の子同士の喧嘩のほうが多いかも。
ラッセル:でも、パークで女の子も男の子も同じトリックを練習しているのに、女の子だけに、聞いてもいないアドバイスを嫌味な感じでしてくることはあるよ。
ーースケート・キッチンは「女性はキッチンにいるべき」という固定概念を覆すために結成されたクルーですが、ニューヨークで暮らしていてそういう感覚を抱くことは多いですか?
全員:(それぞれ口々に)ありすぎる!
ーーたとえばどんなこと?
ジュールズ:まったく知らない男の人が後をつけてきたり、いきなり番号を聞かれることは頻繁にあります。ストリートを歩いていると、キャットコールされたりは日常茶飯事だよね。
ラッセル:私はナイフを持って追いかけられたこともあるし、肉体的にも精神的にも、女というのを理由に窮屈な思いをすることはたくさんあります。
アダムス:私たちはInstagramをやっていて、そこからクルーのことを発信しているんだけど、一方的にフォローされているだけなのに、「なんでフォロー返してくれないの?」と聞かれたり。私たちからしたら「知らないよ!」という感じだけど、しつこく話しかけられたり、それを無視したら不愉快な言葉を浴びせてきたりということもあります。
ジュールズ:もちろん、本当に私たちに影響を受けて「ありがとう」と声をかけてくれる人もいるんだけど、私たちがフォロワーが多いという理由だけで、話しかけてくれる人もいるんだと思う。
ーー日本でも、Instagramが若い女の子の生活のベースになっていますが、どうやって使うのがいいんでしょうね。
ブレン:自分の目的のために最大限に活用はするべきだけど、そればかりに頭をとられると支配されてしまうからダメ。自分のキャリアも作れるし、いろんな繋がりからコラボレーションが生まれることもあるけど、それをメインにしちゃうとバランスが崩れてしまうと思う。
ジュールス:Instagramに限らずだけど、「自分が何者か」というのを忘れてはいけないと思う。
ーーあなたたちにとって、スケート・キッチンとはどういう存在ですか?
ラッセル:スケート・キッチンは、私にとってはホーム。家や家族みたいなもので、どこに行っても繋がっている。自分の土台でもあるし、モチベーションの源でもあります。
アダムズ:私にとっては友情であり、自分を奮い立たせてくれるものかな。
ブレン:有色人種や若い世代だけではなく、すべての女性が自信を持てるためのホームになるべき場所だと思うわ。
ジュールス:男性社会の中で、女の子が居場所にできるスポットが少ないから、それを争ったり互いに蹴落としたりしがちだけど、スケート・キッチンはみんなでサポートし合うというひとつのムーブメントだと思ってる。自分のモチベーションでもあるし、エンパワーしてくれる。女性みんなで立ち上がろうということを伝えるために存在していると思います。
(取材・文=若田悠希)
■公開情報
『スケート・キッチン』
公開中
監督:クリスタル・モーゼル
出演:スケート・キッチン(カブリーナ・アダムズ/ニーナ・モラン/ジュールス・ロレンゾ/アーディーリア・ラブレス/レイチェル・ヴィンベルク/アジャニ・ラッセル/ブレン・ロレンゾ)、ジェイデン・スミス、エリザベス・ロドリゲス
配給:パルコ
2018/アメリカ/106分/R15+/原題:Skate Kitchen
(c)2017 Skate Girl Film LLC.
公式サイト:skatekitchen.jp