ホラー映画と相性抜群!? 『ラ・ヨローナ~泣く女~』ScreenXならではの映像体験

 さて、「ScreenX」はこの作品をどのように盛り上げるのか。多くの観客が想像する通り、まずは広い視界による開放的な表現が魅力だ。だが本作では、開放というよりも、むしろ“包まれる”ような感覚を味わうことができる。ラ・ヨローナが現れる森の中のシーンでは左右からも木々に囲まれているように感じられるし、室内や車内に子どもたちが閉じ込もり互いを守ろうとする場面では、観客も閉鎖された空間の中にいるような錯覚を味わうことになるだろう。

 籠城(ろうじょう)しながら侵入者と戦う映画では、どこから襲われるのか分からないというのが、ハラハラするポイントだ。とはいえ、「どうせもともとは、正面のスクリーン用に作られた映画なんだから、左右の映像から襲われることはないだろう」と、観客によっては頭のどこかで冷静に考えるかもしれない。しかし、そんな油断をしていると大変なことになる。三面のどこからラ・ヨローナが現れるのか、映像が投影される面の数と同じように、観客は普段の3倍の緊張を味わうことになるかもしれない。

 さらに時折、両側面の映像がオフになる演出も効果的だ。これによって、視界が再び広がったときに、緊張が一気に高まることになる。このように、ホラー映画における緊張と緩和を増幅する効果が、「ScreenX」演出にはある。

 娯楽性の強いアメリカのホラー映画には、もともとアトラクション的な楽しみ方が備わっていることが多く、本作はまさにそのような映画の代表といえるような内容だ。その意味で、アトラクション性の高い「ScreenX」は、本作のようなホラー作品と相性が良いといえるのではないだろうか。「ScreenX」未体験という観客はまだまだ多いはず。その楽しさを味わうのに、本作『ラ・ヨローナ~泣く女~』はうってつけかもしれない。

 一方で、アトラクション以外の部分での楽しみ方も存在する。本作は、座席が動くなどの、また違った演出のある「4DX」上映も用意されているが、「ScreenX」版では、通常の上映や「4DX」版には存在しない映像が両側面に映りこんでくる。例えば、メキシコ系の市民たちが、中南米に伝わる祈祷を受けるシーンでは、祈祷を受ける異なる人々の姿が、それぞれ三面に現れる。視界を広げるだけでなく、別の映像が映し出されることで、映画作品の伝える情報量が増やされているのである。このような、従来あり得なかった新しい演出に触れることで、「ScreenX」にはまだ未知の可能性があるように感じられた。

『ラ・ヨローナ~泣く女~』ScreenX特別映像1
『ラ・ヨローナ~泣く女~』ScreenX特別映像2

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■『ラ・ヨローナ~泣く女~』ScreenX上映劇場
【ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場】【ユナイテッド・シネマ 福岡ももち】
https://www.unitedcinemas.jp/screenx/
【シネマサンシャインかほく】
https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/kahoku/
【シネマサンシャイン下関】
https://www.cinemasunshine.co.jp/theater/shimonoseki/

■公開情報
『ラ・ヨローナ~泣く女~』
5月10日(金)全国公開
監督:マイケル・チャベス
製作:ジェームズ・ワン、ゲイリー・ドーベルマン、エミール・グラッドストーン
出演:リンダ・カデリーニ、レイモンド・クルツ、パトリシア・ベラスケス、マリソル・ラミレス、ショーン・パトリック・トーマス
配給:ワーナー・ブラザース映画
2019年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/原題:The Curse of La Llorona
(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:lloronamovie.jp
ScreenX公式サイト:https://www.screenx.co.kr

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