ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』レポート
小池徹平の美声と三浦春馬の恍惚感 ミュージカル『キンキーブーツ』再演で見せた“自信”
こうして三浦の表現力の高さに唸ってばかりだが(多くの観客がそうだろう)、彼は今年の頭に上演された、ドストエフスキー原作の舞台『罪と罰』でも主演している。難解な言葉の数々が並ぶドストエフスキーの世界から、ミュージカルというまったく毛色の違う作品への精神的・肉体的な切り替え。そして何より『キンキーブーツ』は再演だとはいえ、『罪と罰』閉幕からたったの2カ月で、誰もが見惚れるローラ像を仕上げてきたことに、やはりただただ驚くばかりである。
そんな小池と三浦のコンビを支える愉快な面々。ソニンと玉置は、チャーリーを巡る二人の女性のローレンとニコラを好演し、その好対照なさまは舞台に彩りを添え、ローラとたびたび衝突を繰り返すドン役の勝矢は、物語のアクセントとして作品をさらに力強いものとした。また、工場長・ジョージ役のひのの穏やかさが、祝祭的な作品である本作に落ち着きを与え、地に足の着いたものとしていたように思う。これは本作のメッセージがミュージカルの世界だけでなく、私たちの日常においても、何にでも置き換えられるシンプルで明快なものだと静かに表明する。
“どんなときでも自分らしく”。そう高らかに謳われるテーマとともに強く印象に残るのは、やはり演者たちの肉体とそれらが奏でるリズムである。孤独な個と個が集まり、一体となるとき、「個」は「孤」ではなくなる。劇場の一体感が、私たちにもそう教えてくれるのだ。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter
◼︎公演情報
ブロードウェイミュージカル 『キンキーブーツ』
【東京公演】2019年4月16日(火)〜5月12日(日)東急シアターオーブ
【大阪公演】 2019年5月19日(日)〜5月28日(火)オリックス劇場
脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル 日本版演出協力/上演台本:岸谷五朗
訳詞:森 雪之丞
出演:小池徹平、三浦春馬、ソニン、玉置成実、勝矢、ひのあらた、他