『はじこい』深田恭子が手に入れた“人生の自由” 横浜流星との出会いを通して学んだこと

 しかし、順子の言葉を借りればその答案は「0点」だったのだ。というよりも、前提としていた2択が順子を惑わせていたと言ったほうが正確かもしれない。「匡平とお別れする/しない」で悩むのではなく、「“自由”のもたらすものを恐れてきた今までの自分とお別れする/しない」かを考えるべき試験であるように見えた。“お別れ”を告げるべきか否かで悩むべき相手は匡平じゃないはずだ。だって、匡平に問い詰められて答えたように、彼のことが好きなのは紛れもない事実なんだから。“自由”でありながらも、自分が本当に望む生き方ができていなかった順子自身と“お別れ”するか、これまで通りの自分で生きていくか。それを試されていたようだった。

 さすがに大学入試で択一問題が出題されたとき、自分で勝手に選択肢を設定するわけにはいかない。ただ、もし人生の問題で迷ったとき、一度こう疑ってみてもいいのではないか。「この選択肢の中から選ぶことを試されているのか?」、と。そもそも迷うべきこと、悩むべきポイントが違っているのかもしれない。そんなときは一歩引き下がって、いろいろなことを考え直してみるといい。何か大切なことが視界に入っていない可能性もある。解答のヒントは傍線部の前後にあるとは限らない。課題文全体を見渡して初めて分かることもある。ただ目の前に見える(あるいは、当然のこととみなしていた)選択肢にとらわれるのではなく、自分で問題を捉え直して、再検討すること。それが本作を通じて順子が手に入れた新たな生き方の知恵であったと思う。

(文=國重駿平)

■作品情報
火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』
出演:深田恭子、永山絢斗、横浜流星、中村倫也、安達祐実、石丸謙二郎、鶴見辰吾、生瀬勝久、檀ふみ、高橋洋、皆川猿時
原作:『初めて恋をした日に読む話』持田あき(集英社『クッキー』連載)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:有賀聡(ケイファクトリー)
演出:福田亮介ほか
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hajikoi_tbs/

■リリース情報
『初めて恋をした日に読む話』Blu-ray/DVD BOX
7月26日(金)発売
(c)持田あき/集英社・TBS・K-Factory

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