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戸田恵梨香×大原櫻子『あの日のオルガン』は世代を超え愛される作品に 日本映画の新しい広がり方

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世代を超えて愛される映画に

 『あの日のオルガン』は、ひと言で表せば、シニアとキッズが一緒に楽しめる映画。実は、こういったタイプの映画は、ありそうでないというか限りなく少ない。おじいちゃん、おばあちゃんと孫が一緒に見ることができる映画は、たとえばアニメーションなど、確かにある。ただ、双方が満足できるかどうかは別。どうしてもキッズに寄せていくと、大人、とりわけシニアともなれば満足度は下がっていく。

 その中で、本作『あの日のオルガン』は、親元を離れて暮らすことになった子どもたちの気持ちを捉えた物語であり、幼い子どもを疎開させることを決意した父と母の我が子への愛情物語でもあり、戦争がまだ身近に感じられた時代を知る者にとってはあの時の記憶が甦る物語。シニア層から、幼児、子どもを持つ親世代までがそれぞれの視点に立って見ることができて世代を選ばない。それぞれの世代の心に届くものがある。しかも安心してみることができる。

 この安心してみることができるというのはけっこうポイント。これは親の立場になると痛感することなのだが、とりわけ小学生以下のこどもと大人が安心して一緒に見ることができる映画やドラマは少ない。ドロドロの愛憎劇や刑事ドラマ、子どもにとってはちょっと恐怖を覚える手術シーンがお決まりで入ってくる医療系ドラマなどが現在は主流で、ひと昔前のホームドラマような家族が安心してごはんを食べながら見れるような作品が見当たらない。

 また、戦争映画もハードルが高い。戦争の事実を親としては子どもたちにきちんと伝えたい気持ちはある。ただ、いくら内容がよくても、今どきの戦闘シーンをメインに据えたような戦争映画は、とても子どもと一緒に観ることはできない。

 その中にあって、『あの日のオルガン』は戦争の惨さや悲しみを伝えつつも、3世代が一緒になって、しかも安心して観ることができる。こんな、あらゆる世代がなにか思いを共有できる、戦争映画は久しくなかった気がする。戦争を語り継ぎ、後世へとつなぎながら、幅広い世代に届く内容。これもまたヒットの要因のひとつで、過去と照らし合わせれば、『二十四の瞳』のような映画といっていいかもしれない。

 このように大きな広がりを見せつつある本作は、今後はさらなる市民レベルでの広がりを目指す。これからは、もうワンステップ進め、地方の公民館や学校などでの上映も積極的に実施していく予定だという。この試みについて手掛けた平松恵美子監督はこう明かす。

「そもそもこの作品は若い人たちに観てもらいたいという思いがあったので学校上映はとても嬉しいです。また、映画館が近くにない地方の方々にスクリーンで他のお客さんたちと映画体験をしてもらえることも大変嬉しく思っています。できれば、映画を見た後の「語り合い」につながっていけばと願っています」

 また、この映画の反響について平松監督は「私が想像していた以上に、観てくださった方々の感想が熱くて驚いています。また幅広い年代の方々が観て下さっていることもとても嬉しいです」とのこと。

 妙楽寺のある地元、蓮田市の中野和信市長もこうコメントを寄せる。

「蓮田市(当時の平野村)の妙楽寺に開かれた日本初の疎開保育園の実話が映画になりました。疎開保育園が置かれた妙楽寺は、現在も当時と同じ場所にあります。本堂や山門は建て替えられていますが、境内の大きなイチョウの木は今もその姿をとどめています。この映画には、戦争という時代の大きなうねりの中で、必死に子どもたちを守り、未来を願った保母や親たちの強い思い、そして平和への切なる願いが込められています。また、戦時中で物資の乏しい時代にもかかわらず、平野村の人々の疎開保育園受入れという勇気ある決断、他人を思いやるやさしい心、人と人のつながりが丁寧に描かれています。その誇れる思いが、今でもこの蓮田の地に受け継がれ息づいていると実感しています。誇りある蓮田の史実を描くこの映画の上映を通じて、子どもの命や平和の尊さについて多くの皆様に伝えていきたいと考えております」

 派手さはないが、着実にひとりひとりの元に届き、世代を超えて愛される映画になりつつある『あの日のオルガン』。これからさらなる人々の元へときっと届くことだろう。

(文=水上賢治)

■公開情報
『あの日のオルガン』
全国公開中
出演:戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子、白石糸、奥村佳恵、林家正蔵、夏川結衣、田中直樹、橋爪功
監督・脚本:平松恵美子
原作:久保つぎこ『あの日のオルガン 疎開保育園物語』(朝日新聞出版)
音楽:村松崇継
主題歌:アン・サリー「満月の夕(2018ver.)」(ソングエクス・ジャズ)
配給:マンシーズエンターテインメント
(c)2018「あの日のオルガン」製作委員会
公式サイト:anohi-organ.com
公式Twitter:@anohinoorugan

      

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