窪田正孝、朝ドラ主演抜擢は“安心感”の確約 朝ドラ出戻り組への歓迎ムードが後押し?
さらに、もう一つは、朝ドラで増えている「朝ドラ出戻り組」への歓迎ムード。
ヒロインでは、『あまちゃん』で主人公の母親の少女時代を演じた後、『ひよっこ』ヒロインとなった有村架純、『ごちそうさん』でヒロインの義妹を演じた後に『とと姉ちゃん』ヒロインとなった高畑充希、『おひさま』出演後、『花子とアン』のヒロインの妹から『まれ』ヒロインに抜擢された土屋太鳳などが、法則化されつつある。
また、以前、菅田将暉、要潤、瀬戸康史、加藤雅也などについて「『まんぷく』の朝ドラ二度目俳優」記事で挙げたように、男性陣の「出戻り組」も歓迎されている。多くの場合は、知名度や認知度を上げて、故郷に錦を飾るスタイルで再登場しており、『花子とアン』出演以来となる窪田もその路線にのっている。
しかし、窪田の場合、異色なのは、子役から、あるいはイケメン新人枠からなどではなく、「幼馴染キャラ」からの出戻りという点だろう。
朝ドラの場合、ヒロインが結ばれる相手の他に、ヒロインに思いを寄せ、生涯見守り続ける「幼馴染」枠を設けている作品が多い。幼馴染は、『梅ちゃん先生』の松坂桃李など、わずかなケースを除いて、たいてい報われない運命にある。
窪田が演じた『花子とアン』の幼馴染・朝市もまさにそうで、ヒロインを慕い続ける誠実な人柄が視聴者に愛されていた。「朝市には幸せになってほしい」と願う者も多かった。
その人気ぶりや、視聴者の要望に応えるかたちで、スピンオフドラマ『朝市の嫁さん』が作られ、物語では40歳になった朝市が14歳年下の女性と結婚。本編での「報われない、愛されキャラの幼馴染」から、スピンオフの主役を演じ、今度は朝ドラ本編に主役として戻ってきたのだから、応援せずにいられない人が多いことだろう。
放送開始前から、好意的な受け止め方をする「味方」をきっちり確保している『エール』。すでに保険がたくさんあるというアドバンテージを生かし、自信を持って、思い切ったドラマ作りをしてくれることを期待したい。
■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
■放送情報
2020年度前期連続テレビ小説『エール』
2020年 春〜放送予定
出演:窪田正孝
脚本:林宏司
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子
演出:吉田照幸、松園武大 ほか