『アリータ:バトル・エンジェル』なぜ世界的なヒットに? 原作を解釈し直した“愛の物語”

 個人的に、本作のこのような心意気を見せる描写からは、例えば鈴木則文監督の『女番長(スケバン)』シリーズのような青春作品を想起させられた。『女番長』シリーズに登場するのは、筋を通しながら、弱い存在の男に誠を尽くすも、愛する男に裏切られたり、純粋であるがゆえに失ってしまう境遇の女性ばかりである。その構図は、古い男女観が投影された物語における立場を逆転したような進歩性を持っている。

 本作が『アバター』を通過したCG技術を駆使して描き出したのは、特異な美しさであり、人間を超越した動きであり、そこに乗せる高潔な精神である。それらが三位一体となって、ギラギラするほどにキャラクターが際立った、心から応援できる真の女性ヒーロー“アリータ”が生み出されたのである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『アリータ:バトル・エンジェル』
全国公開中
出演:ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ
監督:ロバート・ロドリゲス
脚本・製作:ジェームズ・キャメロン
原作:『銃夢』木城ゆきと
配給:20世紀フォックス映画
(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/alitabattleangel/

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