泥棒から“かけがえのない”存在に 『まんぷく』でいま絶好調な瀬戸康史

 もはや見かけない日はないほどに映画やドラマでの活躍を繰り広げる瀬戸だが、デビュー以来、舞台作品への参加もコンスタントに続けている。キャリア初期の頃の彼は、“テニミュ”の愛称で親しまれる『ミュージカル テニスの王子様』に多数出演。いわゆる“2.5次元舞台”とあって、ルックスが作品起用の大きな理由となりそうだが、ここで現在の瀬戸に繋がる表現力を培ってきたといえるだろう。その後、彼の所属する俳優集団・D-BOYSによる演劇ユニット公演「Dステ」が立ち上がると、様々な演出家とのコラボレーションの中で、ジャンレスな作品群を生み出すことに貢献。近年は『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』(2016)や『陥没』(2017)など、世代もキャリアも異なった演技者の集う舞台にアクティブに参加し、主演を務めた『関数ドミノ』(2017)では、第72回文化庁芸術祭・新人賞を受賞した。

 舞台では、映画やドラマ以上に時間をかけて作品や自身の役に向き合い、集団芸術とあってチームワークも必要とされる。うん十回と同じセリフを口にしなければならないのは、演劇の苦しさであり醍醐味だろう。そしてその中での、山内圭哉や銀粉蝶、井上芳雄に生瀬勝久、さらに勝村政信といった演劇人との交流が、瀬戸の芝居の器用さの礎となっているのではないだろうか。また、『陥没』でタッグを組んだ演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチによる新作『ドクター・ホフマンのサナトリウム ~カフカ第4の長編~(仮)』への出演も先ごろ発表されたばかり。これには是が非でも駆けつけたいところだ。

 さて、半年にわたって放送される『まんぷく』も、残すところあと一カ月。とはいえ、まだまだ問題は山積みであり、神部の愛嬌や想いの強さだけではどうにもならないものばかりだ(彼の家庭での振る舞いも含めて……)。そのあたりを瀬戸がどのように演じていくのか、これも大きな見どころだろう。

『まんぷく』第20週より(提供=NHK)
『まんぷく』第22週より(提供=NHK)

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、松下奈緒、要潤、大谷亮平、桐谷健太、瀬戸康史、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、さとうほなみ、玄理、矢柴俊博、加藤雅也、牧瀬里穂、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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