「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメは『女王陛下のお気に入り』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、パンがなければ、ラーメンを食べる最年少BOYの安田が『女王陛下のお気に入り』をプッシュします。

『女王陛下のお気に入り』

 『ロブスター』『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』のヨルゴス・ランティモス監督最新作となる本作。遂に投票が始まった第91回アカデミー賞で、『ROMA/ローマ』とともに台風の目となっており、大注目の1作であることは間違いないでしょう。

 第75回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞と女優賞をW受賞した本作は、孤独な女王と、その寵愛を取り合う2人の女の関係性を描く宮廷絵巻。虚弱な女王・アンが王位にあり、彼女の幼馴染・サラが病身で気まぐれな女王の世話をし、絶大な権力を振るう時代。そんな中、新しい召使い・アビゲイルが参内し宮中に影響を与えていく。

 本作一番の魅力と言っても過言ではないのが、主要キャストを務めたオリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズによる演技合戦だろう。女王と侍女という明確な主従関係であるはずなのに、裏では目まぐるしく上下する関係性を見事に表現。愚者になりきり、取り入ろうと画策するストーン。毅然とした態度で、それに対するワイズ。ふたりの女性の間で揺れるコールマン。画面に引き込まれる芝居がそこにはあった。アカデミー賞では、3人とも主演/助演女優賞にノミネート、英国アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞でも女優賞を勝ち取りとにかく存在感を放っている。

 そして、この物語が史実に基づいて作られたものだということも重要だ。世界史でいうところの18世紀初頭、スペイン継承戦争からストゥアート朝断絶までの宮廷が舞台。戦争状態にあるにも関わらず、宮廷では、アヒルレースや射撃、舞踏会といったお祭り騒ぎ。浮世離れしたトランス状態な宮廷の様子が、ブラックユーモアたっぷりに描かれている。撮影には広角レンズを多用しており、我々観客は、その豪華絢爛かつ狂気を内包した宮廷を、俯瞰して眺める。21世紀の今見るからこそ、そこにシュールな笑いが生まれるのだろう。

 宣伝ではイギリス版大奥と銘打たれていたが、確かにその通り。女王の寵愛を巡って宮中であれこれと画策するさまは、シュールでありつつ、ある種の恐怖心を覚えさせる。アカデミー賞授賞式まで1週間と少し、2019年の映画シーンにおいて、必見の作品であることは間違いない。

■公開情報
『女王陛下のお気に入り』
2月15日(金)全国ロードショー
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、オリヴィア・コールマン、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン
配給:20世紀フォックス映画
2018年/アイルランド・アメリカ・イギリス映画 
(c)2018 Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/

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