横浜流星『愛唄』、登坂広臣×中条あやみ『雪の華』……“楽曲モチーフ映画”成功のポイントは?

『愛唄』『雪の華』ヒット曲を映画化する理由

 横浜流星と飯島寛騎、清原果耶といった伸び盛りの若手俳優が共演を果たした『愛唄 -約束のナクヒト-』と、三代目J Soul Brothersの登坂広臣と中条あやみが共演した『雪の華』。2000年代に発売され、今なお様々なアーティストにカバーされるなどして歌い継がれている人気楽曲をモチーフにして作り上げられたという共通点を持つ2本の映画が、奇しくも同じタイミングで劇場公開されている。

『雪の華』(c)2019映画「雪の華」製作委員会

 改めて説明するまでもないが、前者のもととなった楽曲は同作の脚本も担当しているGReeeeNが2007年に発売した『愛唄』で、当時流行のまっただ中だった“着うたフル”で記録的なセールスを叩き出した、いわば当時を象徴するラブソングのひとつだ。そして後者は中島美嘉が2003年にリリースし、初週のオリコンランキングでは4位と、時間をかけて徐々に“冬の定番ラブソング”として定着してきた印象のある同名楽曲がもととなっている。

 この両作には楽曲モチーフという点以外に、思わぬ共通点がある。それはどちらも余命わずかの主人公の恋模様を描いているということだ。余命3カ月を宣告された主人公が古い友人と、ある1冊の詩集に出会う。そして偶然にも同じ病院に入院していた詩集の著者である少女と心を通わすようになり、余命と恋の狭間で苦悩しながらも真正面から向き合っていく『愛唄』。そして『雪の華』では恋をすることに憧れていたヒロインが余命1年を宣告され、偶然知り合った青年を助ける代わりに期間限定の恋を自ら持ちかける。結果的には似たようなテーマ性を持ち得ているものの、その導入として存在する恋愛に対するモチベーションに関しては正反対の作品といえるだろう。

『愛唄 -約束のナクヒト-』(c)2018「愛唄」製作委員会

 もっとも、この2作のように既存のヒット曲をモチーフにした映画というのはかなり前から数多く作られてきた歴史がある。有名なところでは石原裕次郎が歌い、また映画版でも石原が主演を務めた『銀座の恋の物語』であったり、はたまたコマーシャルソングとして作られ流行語にもなったフランク永井の『有楽町で逢いましょう』であったりと、とりわけ映画産業が柔軟だった50〜60年代を中心に、楽曲のヒットに乗じる形で作られるケースが多かった(おそらくその中には、映画を作ることを前提に作られた楽曲も少なくはないだろう)。

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