光石研と渋川清彦が連ドラ初主演! “おっさんバイプレイヤー”ブームの成熟が、ドラマの新分野を生む

「おっさんバイプレイヤー」ブームの成熟

 そして、もう一つは、2018年公開映画13本、『西郷どん』(NHK)、『モンテ・クリスト伯―華麗なる逆襲―』(フジテレビ系)などのドラマに出演し、大忙しだった渋川清彦と、ドロンズ石本、大西信満の「おっさん3人+柴犬3匹」×公園のドラマ『柴公園』(TOKYO MX)である。

(c)2019「柴公園」製作委員会

 こちらは、愛犬の散歩で公園に来るおじさんたち3人が、互いの愛犬の名前しか知らないユルイつながりで、ベンチに座り、ひたすらダべる会話劇。その会話もまた、「山手線で、実は降りたことのない駅が結構あった」などのどうでも良い話が中心で、「じもぴー」からの疎外感を勝手に感じたり、小さなモヤモヤ感を感じたり、勘違いが発覚して脱力したりするだけの、実にまったり平和で、ちょっぴり笑える物語だ。

 ところで、『博多っ子純情』のエキストラとして受けたオーディションで主役に抜擢され、デビューした光石研と、ファッション誌のモデルとしてデビューした渋川清彦。どちらも華やかなスタートながら、それぞれにヤクザやチンピラ、借金まみれのダメおやじ、幽霊、小心者の市井の人など、悪役やヤバい役、サエない役などを多数こなしてきた。

 そんなバイプレイヤーとして培われた技術と表現力に、本人が歩んできた人生の年輪や痛みが加わることによって、悪役もダメ男も、どこか弱さや繊細さ、優しさ、悲哀の漂う魅力的なキャラクターになる。

 ドラマチックな物語ではなく、普通の人の日常でのちょっとした恥ずかしさや、ちょっとした苛立ち、沸点の低い幸福感や、小さな浮き沈み、心の機微を描くドラマの主軸を務めるには、イケメン俳優やスター俳優では物足りない。

(c)2019「柴公園」製作委員会

 「おっさんバイプレイヤー」だからこそ演じられる主役、成立する物語というのがある。そして今、そんな「何気ない日常の中のドラマ」を求める人、癒されている人がたくさんいる。おそらく作り手側にも視聴者側にも「この人が見せる、こんな表情やこんなシチュエーションが見てみたい」という欲望はまだまだたくさんあるはずだ。

 そう思うと、「おっさんバイプレイヤー」の奥行きある演技力と存在感は、消費し尽されてしまうような薄っぺらなものではなく、「おっさんバイプレイヤーの物語」も単なる一過性ブームではなく、すでに確立されたドラマの一分野になっているのかもしれない。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
木ドラ25『デザイナー 渋井直人の休日』
毎週(木)深夜1時~1時30分
出演:光石研 黒木華
原作:『デザイナー 渋井直人の休日』渋谷直角(宝島社)
監督:松本佳奈 久万真路 桑島憲司
脚本:ふじきみつ彦 松本佳奈
制作:テレビ東京/C&Iエンタテインメント
製作著作:「デザイナー 渋井直人の休日」製作委員会

『柴公園』
毎週(木)テレビ神奈川ほか全国12局以上で放送
出演:渋川清彦、大西信満、ドロンズ石本、桜井ユキ、水野勝、蕨野友也(ドラマのみ)、小倉一郎(ドラマのみ)、螢雪次朗(ドラマのみ)、山下真司、佐藤二朗
監督:綾部真弥(ドラマ&映画)、田口桂(ドラマ)
製作総指揮:吉田尚剛
企画・脚本:永森裕二
制作プロダクション:メディアンド
企画・配給:AMGエンタテインメント
製作:「柴公園」製作委員会
(c)2019「柴公園」製作委員会

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