菅田将暉、要潤、瀬戸康史、加藤雅也らが幸福な恩返し 『まんぷく』“朝ドラ出戻り組”の活躍

 また、福子の姉・克子の夫で画家の克彦を演じている要潤の場合、朝ドラデビューは『まんてん』だった。演じたのは、アカツキ重工の社員・中島隆役。すでに『仮面ライダーアギト』(テレビ朝日系)出演で知られていたこともあり、ヒロインとの共演シーンは多くはなかったものの、甘いマスクと声の良さ、初々しい演技が人気に。

 実は『まんてん』は彼が「師匠」と仰ぎ、役者としての目標に掲げる大杉漣と出会った場であり、役作りや現場での居方、調和の大切さなどを学んだ作品でもあったと後に語っている。

要潤『まんぷく』(提供=NHK)

 当時は「イケメン俳優」枠だった要潤が、やがて絵を描くことへの執念から狂気を帯びた目を朝ドラで見せることになるとは。ちなみに、NHKではドキュメンタリードラマ風歴史教養番組『タイムスクープハンター』という珍妙な味わいの異色作で「怪人」的魅力を発揮し続けてきただけに、そうした経験も一つの武器になったのではないかと思う。

 さらに、『まんぷく』で、泥棒としての登場→萬平の仕事のパートナー&福子の姪・タカちゃん(岸井ゆきの)との恋仲→タカちゃんと結婚し、親族になる、大阪帝大卒の神部を演じている瀬戸康史。彼の朝ドラデビューは『あさが来た』だ。

 ディーン・フジオカ演じる「五代様」が亡くなり、視聴者たちのぽっかり空いた心の穴を埋めるように登場したのが、瀬戸康史演じる成澤泉である。

瀬戸康史『まんぷく』(提供=NHK)

 アメリカへの留学経験があり、知性や教養・学問に対する熱意はあるのに、お金には全く無頓着で、身なりも気にせず、ボロをまとったキャラクターを魅力的に演じきった。初対面で「3日間何も食べていない」と言って、あさ(波瑠)の前でぶっ倒れるところ、学問も熱意もあるのにお金がないところ、ヌケているところなどは、神部に通じるものがある。ちなみに、同じNHKでも『透明なゆりかご』で演じた小さな産院の院長役は、淡々としていて冷静ながらも、熱い信念を秘めたタイプ。それぞれのキャラは、情熱の表出の仕方が異なるものの、「瀬戸康×NHK=知性と情熱」という方程式は、もはや鉄板にも思える。

加藤雅也『まんぷく』(提供=NHK)

 さらに、後半戦に、ヒロインのパート先であり、憩いの場となる「パーラー・白薔薇」の店主・川上アキラ役で出演している加藤雅也も、朝ドラ出身者。前作は『青春家族』で、なんと30年ぶりの朝ドラ出演であり、俳優生活30周年の加藤にとって原点のような作品であった。かつてはクールなイケメン俳優枠だったが、今ではコテコテの「お笑い」要員。時を経て、年齢を重ねて、「面白い関西人」という素顔の魅力をキャラクターに反映させた出演となっている。これもまた一つの朝ドラへの幸福な「恩返し」のかたちだろう。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、松下奈緒、要潤、大谷亮平、桐谷健太、瀬戸康史、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、さとうほなみ、玄理、矢柴俊博、加藤雅也、牧瀬里穂、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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