『シュガー・ラッシュ:オンライン』ジェンダーロールから自由に プリキュアとの共通点を探る
ラルフだってプリンセスになれる?
本作のプリンセスに対する挑戦はそれだけにとどまらない。冒頭に示した「男(の子)だってプリンセスになれる」をクライマックスでやってのけるのだ。
物語の終盤、ピンチに陥ったラルフは14人のプリンセスたちに助けられる。この時、ラルフはなぜか白雪姫のドレスを着せられ、意識を失いベッドに横たわったところをカエルの王子様にキスされて目覚めるのだ。
ここで筆者は『HUGっと!プリキュア』を思い出さずにはいられなかった。19話「ワクワク!憧れのランウェイデビュー!?」でキュアエールが「男の子だってお姫様になれる」と言い、42話では男の子がプリキュアになった(プリキュアのジェンダーロールに関してはkasumi氏の記事を参照してほしい)。
コミカルな描写として描かれているあたり、プリキュアに例えればキュアゴリアくらいの意味合いのシーンなのかもしれない。とはいえ、男がプリンセスになれる可能性をわずかでも提示した意義は大きいのではないか。前作ではヴァネロペという少女がドレスを脱ぎ、今回はラルフという男がドレスを着るという鮮やかな対比の構造になっている。
『シュガー・ラッシュ』は出自にとらわれず、自由に生きることの大切さを描く作品だ。ゲームの悪役として生まれたラルフは、前作の大冒険の末、ヴァネロペだけのヒーローになった。本当はプリンセスであるヴァネロペもおてんばな1人の女の子として生きる道を選んだ。職業や生きる場所だけでなく、続編の本作では性別の規範からの自由も描いた。蛇足にも、焼き直しにも陥らず、的確なアップデートを果たした見事な続編だ。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。
■公開情報
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
12⽉21⽇(⾦)より、全国4DX劇場にてロードショー
監督:リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン
製作:クラーク・スペンサー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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公式サイト:Disney.jp/SugarRushOL