鈴木亮平と瑛太、対照的な演技アプローチが光る 『西郷どん』最大の敵となった2人の結末は?

 11月18日に放送された第43回「さらば、東京」では、西郷の朝鮮使節派遣をめぐり意見が対立。これまでの朋友としての喧嘩とは違い、政治的な意見の違いで政府を離れた西郷は鹿児島に下野する。「腹を割って話したい」という西郷と、欧米から戻り、自分の信念を貫き突き進もうとする大久保で決定的な別れが訪れるという場面だ。冷然と振る舞おうとするも、「腹を割って話したい」と感情に訴えかける西郷に対して、心揺さぶられる大久保の心情を慮ると切ない。

 西郷を慕う不平士族が続々と鹿児島に集まり、私学校を作ったものの、彼らの新政府への不満が爆発。大久保は、各地で相次いだ不平士族の反乱を鎮圧し、私学校にも密偵を送り込むなど警戒していたが、若い士族の怒りを抑え込むことはできなかった。

 西郷が新政府に対して挙兵するという事態に取り乱し、大久保は鹿児島へ向かおうとするが引き止められて断念する。「日本を見捨てる気か」という言葉に踏みとどまることができる分別が彼にはあった。政治家として覚悟を決めながらも、動揺せずにはいられない大久保の苦渋の選択。瑛太の繊細な演技が光った。

 最終回のタイトルは、西郷の座右の銘でもある「敬天愛人」。戊辰戦争で薩摩藩と戦った旧庄内藩の人々が西郷に学んだ教訓をまとめた「南州翁遺訓」に収められた中に「道は天地自然の物にして、人はこれを行うものなれば、天を敬する目的とす。天は人も我も同一に愛し給うゆえ、我を愛する心を似て人を愛する也」とある。

 利他的で自分のことよりも他人のために、自分に期待してくれる人の思いに応えるように生きてきた西郷と、彼を誰よりも理解してきた大久保。

 西郷の情熱と大久保の冷静さが新しい国をつくる原動力となったが、最後は西南戦争で敵として戦うことになった2人。「自分ほど西郷隆盛を知っている者はいない」という大久保の言葉が残っているほど、深いところでつながっていたのに、悲劇は訪れる。

 愛される西郷のイメージを踏襲しながらも、ただ器が大きく豪胆な男というだけでなく、人間性豊かで周囲の人に喜びと安心感を与える新しい西郷隆盛を体現した鈴木亮平。そして、西南戦争後に冷徹で非情な政治家という印象がある大久保が抱えていた葛藤や矛盾、そして朋友への熱く深い愛情を希有な表現力で見せつけてくれた瑛太。最後まで、その素晴らしい演技を見届けるしかない。

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
『西郷どん』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/segodon/

■リリース情報
『大河ドラマ 西郷どん 完全版 第参集』
12月19日(水)Blu-ray&DVD発売
価格:12,900円+税
収録時間:本編534分+特典89分

【特典映像(予定)】 
・ノンクレジットオープニング
・革命編 10分PR
・出演者発表「坂本龍馬が出会う西郷家の人々&維新の礎を築くキ ーパーソン」
・特番「いざ革命へ!西郷と4人の男たち」より 出演者インタビュー(未放送含む)(2018年7月8日放送)
・小松帯刀役・町田啓太インタビュー
・桂小五郎役・玉山鉄二インタビュー

【封入特典】
・特製ブックレット(あらすじ・日新公いろは歌・略年表・ほか)
・相関図リーフレット

【全巻購入特典】
・『西郷どん』オリジナル世界地図
※第壱集~第四集全巻をご購入いただき、各巻に封入の応募券を集めてご応募いただいた方全員にプレゼント致します。応募方法、応募締切等については2019年3月20日(水)発売の第四集に封入される応募はがきに記載。
※仕様、特典内容や名称は予告なく変更となる場合がございます。 予めご了承ください。

出演:鈴木亮平、瑛太、黒木華、錦戸亮、小栗旬ほか
原作:林真理子
脚本:中園ミホ
音楽:富貴晴美
タイトル映像・題字:L.S.W.F
語り:西田敏行
制作統括:櫻井賢、櫻井壮一
プロデューサー:小西千栄子 藤原敬久
演出:野田雄介、盆子原誠、岡田健、石塚嘉、堀内裕介
(c)2018 NHK
公式サイト:https://segodon.ponycanyon.co.jp/

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