鈴木亮平と瑛太、対照的な演技アプローチが光る 『西郷どん』最大の敵となった2人の結末は?
NHK大河ドラマ『西郷どん』が最終回を迎える。幕末を舞台にしたドラマは数多くあり、西郷隆盛、大久保利通についても過去にさまざまな描かれ方をしてきた。薩摩藩の下級武士の家に生まれ、幼なじみとして兄弟のように育った2人。鈴木亮平が演じる主人公の西郷隆盛、そして瑛太が演じる大久保利通のように激動の時代を生き抜くなかで、最高の友情を育んだ末に最大の敵となってしまう関係というのはそうそうない。
情に厚く、共感力の高い天真爛漫な西郷と、意志が強く、情に溺れることなく合理的に物事を進めるタイプの大久保。正反対の性格の2人だからこそ、互いに助け合い、力を合わせたことで変革の時代をともに生き抜き、日本の歴史を大きく動かした。
役によって自在に体型を変え、その役に憑依するタイプの役者である鈴木亮平と、飄々とした佇まいを見せつつもただならぬ存在感でどんな難しい役でも引き寄せるかのように演じる瑛太。演技のアプローチが対照的な2人が、正反対の性格の西郷と大久保を演じる面白さ。
「振り返れば大久保は青春期のころから、長い謹慎処分を受けたり、久光公に近づくため囲碁を鍛錬していたりと、肉体表現がしづらい役でした。吉之助さぁがどんどん答えを導き出して行動するスピードの速さに対して、どこか悔しさがあったし、大久保らしさをどう出せるだろうという葛藤がずっとありました」と瑛太は公式サイトで語っている。
たとえば、第20回放送「正助の黒い石」では、西郷が島流しになり、愛加那(二階堂ふみ)と島で生きていくのも悪くない……くらいの勢いで島の生活に馴染んでいる頃、島津久光(青木崇高)を相手に大久保は鍛錬した囲碁をしながら、存在感をアピール。仲間たちに「そんなに出世したいのか?」と久光への密告者呼ばわりもされ、精忠組の過激派である有田新七(増田修一朗)らとの対立も深まってしまった。
久光に気に入られるのは嘆願書を渡すためであり、西郷を呼び戻すためだということが大山格之助(北村有起哉)らに伝わり誤解が解ける。真実を知った大山から「何で早くそれを言わないのか」「(西郷に戻ってきてほしいという)みんな気持ちは同じ」と言われたように、屈折した大久保のやり方は仲間に伝わりにくく、誤解を招くというエピソードが盛り込まれていた。
「おいは、おいのやり方でしかできん」という大久保に対して、西郷のようにストレートに物を言い、感情をハッキリと表現する人は安心して相手も心を開く。人よりも慎重に物事を考えてしまう大久保の不器用な一面を、瑛太は歯がゆいくらい純粋に演じていた。
また、瑛太は西郷が周囲の人を照らす太陽のような存在だとしたら、大久保はその正反対の性格であるがゆえ月に例えてもいる。開放的な人柄で相手の心に寄り添うことで、すぐに人の心を掴んでしまう西郷の魅力を一番近くで見てきて、誰よりも理解して、彼を必要としながら時に複雑な感情も抱くという矛盾と葛藤を抱えた大久保。
太陽と月とは言い得て妙だが、主人公の西郷の失敗や破綻も含めて、ドラマチックな人生の中で助け合いながら理想に向かって進んでいく2人の成長を見守ることができたのは貴重な経験のようにも思える。明治維新から150年となる2018年の今、西郷隆盛を鈴木亮平が、大久保利通を瑛太が演じてくれてよかったと最終回を前に改めて思う。