ネットの向こうには怪物しかいないのか? 真木よう子主演『炎上弁護人』が突きつける“人間の本質”

 NHK土曜ドラマスペシャル『炎上弁護人』は間違いなくオススメだ。一足先に拝見させていただいたのだが、約1時間15分、夢中で観てしまった。ネットの炎上を扱ったドラマは最近多く見受けられるが、よりチャレンジングかつ丁寧に、“魑魅魍魎蠢くネットの向こう”の奥底に何が潜んでいるのかを深く掘り下げた、質の高いヒューマンドラマに仕上がっている。

 「炎上」と真木よう子。タイトルだけでも、現実とドラマの中をどうしても重ねずにはいられない、話題性を狙った起用だと思われることは確かだろう。実際ドラマの中でも、ネット炎上と戦う弁護士でありながら、自身もネット炎上に遭ったことがあるという役柄のため、思わずドキリとさせられる部分もある。主演である真木本人のTwitter炎上問題へのバッシングばかりが過剰に取り上げられてしまった、昨年放送ドラマ『セシルのもくろみ』(フジテレビ系)最終回。この回におけるツギハギだらけの終盤を懸命に繋ぎとめるかのような、真木演じるヒロインの演説は、あくまで物語の中の話ではあるがどうにも空しかった。

 芸能人に関わらず現代社会を生きる誰の日常にとっても無関係とは言えない「炎上」。NHKは10月末に前後編仕立てで放送された野木亜紀子脚本、北川景子主演土曜ドラマ『フェイクニュース』でもSNSの炎上問題をテーマに掲げている。『フェイクニュース』は、「つぶやきは、感情を食べて、怪物になる」というキャッチフレーズにあるように、いろいろな人の出来心や悪意、自分のサイトのPV数があがるという個人の利益の追求に、政治家の思惑まで絡むことで、真実ではないことが大衆の熱狂へと変わり新たな真実が作り上げられてしまい、ヒロインもまたその渦の中で踊らされかねないという現代社会の底知れない恐怖を描いていた。

「ネットの向こうは、嫉妬とか悪意が渦巻いている、魑魅魍魎の世界だと思ったほうがいい」

 『炎上弁護人』における真木よう子演じる渡会美帆自身も、序盤でそう言う。だが、本当にそうなのか。ネットの向こうは底知れない怪物しか潜んでいないのかということを真摯に突き詰めたのが、この『炎上弁護人』である。

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