The Wisely Brothers 真舘晴子の「映画のカーテン」第4回

The Wisely Brothers 真舘晴子が『レネットとミラベル』を観る 「アトラクションのような感覚さえある」

「もはやアトラクションのような感覚さえある」

 タイトルのとおり、この作品は4つのエピソードに分かれたオムニバスです。その中で私が一番好きなのは、第1話の「青い時間」。夜行性の生き物が鳴き終わり、朝に鳥がさえずりを始める前、夜明け前に数秒間だけ訪れる“青い時間”について語り合ったレネットとミラベルが、翌朝に早速早起きをして2人でこの時間を体験しようとするお話です。

 私はもともと青色が好きというのもあるんですけど、朝方にも“青”があるんだと驚きました。虫が鳴く夜の時間、鳥が鳴く朝の時間、その二つの間に一瞬の静寂があるというのが本当かどうかは分かりませんが、私はそれをこの映画で知って、すごい発見だなと思いました。「私も体験してみたい」と。まだ実際に試してはいないのですが(笑)、映画の中の2人はそれを見ようと挑戦するわけです。

 レネットとミラベルは“青い時間”を体験するため夜中に起きようとするわけですが、眠くなって寝てしまうんです。小学生の時友だちの家に泊まりに行って、はじめて「徹夜してみよう!」と張り切って、結果寝てしまった記憶も思い出します。映画館でその状況を観ていると、2人と同じようにこっちも眠くなっていってしまう。私自身もレネットとミラベルと一緒に、そこにいるような気持ちになってくるんです。そんな中で静かな時間が訪れたときのハッとするような感覚は、もはやアトラクションのような感覚さえありました。

 ロメールの作品は他にもたくさん観ているのですが、どの作品が一番好きかはなかなか選べません。映画館で観れる機会もたまにあるので、その時は何かを思い出すように観に行きます。

 今回ご紹介した『レネットとミラベル 四つの冒険』はコミカルさ、自然の豊かさ、街の早歩きな雰囲気も、全部すこしづつ味わえるので、気軽に観れるのが好きです。とてもかわいい映画。素晴らしいときもそうでないときも、両方あるから生活はおもしろい。何気ない日常の一風景がそれだけで映画になっていて、観ていて美しいな、楽しいなという気持ちにさせてくれる監督だと思います。

(取材・構成・写真=宮川翔)

■真舘晴子
The Wisely BrothersのGt/Voを担当。
都内高校の軽音楽部にて結成。オルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調とし会話をするようにライブをするスリーピースバンド。
2014年下北沢を中心に活動開始。
2018年2月キャリア初となる1st full album『YAK』発売。
公式サイト:http://wiselybrothers.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/wiselybrothers/

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