声優・宮野真守が考える“映画を吹き替えで観る醍醐味” 「キャラクターの全部の動向を観られる」

宮野真守が考える“吹き替えの醍醐味”

 映画『スモールフット』が10月12日に公開された。本作は、人里離れた雪深い山頂に住む、大きな体で心優しきイエティと小さな足の伝説の生物“スモールフット(=人間)”の絆を描く物語。イエティのミーゴと人間のパーシーが偶然出会い、大騒動が巻き起こる。

 今回リアルサウンド映画部ではパーシーの吹き替え声優を務めた宮野真守にインタビュー。日本語のアニメと吹き替えアニメでの演技の違いや、映画を吹き替えで観る醍醐味などを語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「吹き替えのときは俳優さんの息に寄り添いたい」

ーー『スモールフット』は、人間が伝説の生き物という不思議な物語でした。

宮野真守(以下、宮野):今回のお話は、斬新な世界設定で、人間ではなく、ビッグフットすなわちイエティ側の目線で、イエティの常識や日常が描かれます。僕が演じる人間パーシーは、イエティにとって伝説の生き物“スモールフット”という設定に、面白いなと心惹かれました。でも別に伝説感を出すつもりは全然なくて(笑)、人間として演じて立ち回っています。パーシーは売れなくなった三流芸能人なのですが、僕も過去にはつらい時期を味わったことがあるので、パーシーがいろいろと起死回生の策を練っているところがどこか共感できるというか、「頑張れ! パーシー頑張れ!」と思いながら演じていました(笑)。

ーー基本的なことを聞くのですが、日本語のアニメと吹き替えのアニメって、演技に違いはあるのですか?

宮野:アニメーションに限らず洋画実写の吹き替えもそうなのですが、僕は元の役者さんのお芝居をしっかり拾いたいなと思っています。実は声優での、初めてのお仕事が海外ドラマ『私はケイトリン』の吹き替えだったので、海外の俳優さんのお芝居にかなり引っ張ってもらう部分があり、相当助けられたんです。「こうやって自分のお芝居を広げていくことができるんだ」みたいな感覚を学びました。今は自分のノウハウや、やりたいこともあり、全部が全部じゃないのですが、吹き替えの際は、より原作や本人の意図を僕自身が僕なりに寄り添えるように意識することがありますね。

ーーそれでは、元の映像を観てから収録しているのですね。

宮野:そうですね。資料として練習用に元の映像をいただけるので、「こんな風に喋ってるんだ」と思いながら、お家でせっせと練習して収録に臨みます。

ーー英語のテンションって日本語と違っているので、合わせるのは難しいと思います。

宮野:もうもはや僕は色んなテンションの役をやってきてるので(笑)。確かに今回のパーシーはお調子もので、パーシー役のジェームズ・コーデンが自由に伸び伸びと演じているのに合わせていくという作業は大変な時もあります。テンションの起伏や、畳み掛けるようなマシンガントークとかが凄くて。でもその作業も、僕にとってはとても楽しいんです。

ーーそれでは、アニメと吹き替えの場合は違いがあるのでしょうか?

宮野:「こういう風に変えよう」とは思うことはないですね。声というより“呼吸感”が大きく違う気がします。なぜなら、吹き替えの場合は「呼吸」がもう入っていまして、台本にも「息」と書いてあります。吹き替えの場合は、向こうの俳優さんの呼吸に、自分の呼吸を合わせて声を入れるんです。一方、アニメの場合は、キャラクターが口パクで動くので、そこにまさに“息を吹き込む”作業をします。なので、流れている空気感の違いは感じます。僕はアニメの方ではしっかり息を吹き込みたいなと思いますし、逆に吹き替えのときは俳優さんの息に寄り添いたいなと考えています。

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