『あの頃、君を追いかけた』には齋藤飛鳥の“成長”が刻まれている 真愛と重なる等身大の演技
本作のクライマックスは、劇中の後半にやってくる真愛の思いが明かされるところだろう。あの頃には時間は戻らない。やり直すこともできない。違う未来もあっただろう。けれど、あの頃があったからこそ今の自分がいる。自然とそう思えるのは、きっと2人のあの頃が一生懸命に輝いていたからだ。その2人の始まりとも言えるのが、教科書を忘れた真愛に浩介がそっと教科書を渡し、代わりに教師から怒られるシーン。感情の起伏がなく穏やかだった真愛は、そこから浩介に興味を示し始める。「幼稚」という真愛のキラーフレーズや青のボールペンで浩介の右肩をつつく仕草など、生粋のドSキャラでもある齋藤と真愛の似通った部分は多くある。中でも浩介との心の距離をだんだんと縮めていくが、どこか天邪鬼な真愛の在り方が、最も齋藤の等身大の姿を彷彿とさせた。徐々に笑顔が自然になっていくその様は、仲良くなっていった制作陣との絆だけでなく、齋藤自身の演技の表れだ。
『あの頃、君を追いかけた』は、2017年の齋藤という“あの頃”を内包した作品でもある。これから先、乃木坂46の齋藤飛鳥としても、1人の齋藤飛鳥としても、輝き続けるだろう。10年先の未来、齋藤がどこかのインタビューで「『あの頃、君を追いかけた』があったから今の私がいる」と、そんな風に答えているような気がしてならない。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter
■公開情報
『あの頃、君を追いかけた』
全国公開中
出演:山田裕貴、齋藤飛鳥、松本穂香、佐久本宝、國島直希、中田圭祐、遊佐亮介
監督:長谷川康夫
脚本:飯田健三郎、谷間月栞
原作:九把刀『那些年、我們一起追的女孩』
製作:『あの頃、君を追いかけた』フィルムパートナーズ
配給:キノフィルムズ
(c)『あの頃、君を追いかけた』フィルムパートナーズ
公式サイト:http://anokoro-kimio.jp