『HiGH&LOW』に続く熱狂の予感? 『PRINCE OF LEGEND』に込められた“王子”への批評
それらのことを『プリレジェ』はすべてちりばめながらも覆す。例えば、奏は小学生のころに亡くなった母親に「王子はいつでも気品を忘れず、レディ・ファーストを心掛け、ときには男らしく女の子を守ってあげるのよ」「王子はどんなときでも笑顔でいないと」「あなたにこの命をささげて愛し続けます」と言われて育った。いわば、王子の英才教育を受けて育ったとも言える。母が亡くなる前に奏に渡した一冊の本には、手書きで「女の子を泣かせないこと、初めてつきあう人と結婚すること、あなたのプリンセスは世界に1人だけ、その人に命をささげて、愛し守り続けること」というメッセージが書かれていた。そして、それとまったく同じ言葉を学園内で言っていたのが、本作のヒロイン・成瀬果音(白石聖)だったのである。王子が運命を感じてもなんら不思議のないシチュエーションだ。
しかし、考えてみれば、王子に求められることは、「全方位にパーフェクトな存在であれ」というようなものである。女性であれば、見目麗しく仕事もできて周囲に対しても気遣いができて、そして将来的には、パーフェクトな母であり妻であり女であれ、と言われることに近い。これは、昨今では女性に何もかも求めすぎて「呪い」になっているのではないかとも議論されることだ。第1話の時点で、王子の「理想像」が「呪い」でもあるというメッセージを強く描くということは、今後、それを覆すのかもしれないし、逆にとことんまで受け入れて「王子」をパーフェクトに描くのかもしれない。
と思った矢先に、第1話の終盤からすでに覆しにかかってきた。ヒロインに一目ぼれした奏は学園の生徒たちがいる前で跪き、「僕のプリンセスになってください」と告白する。これは、多くの王子ものであれば、プリンセスは喜ぶべきところだ。にもかかわらず、ヒロインは「お花畑に住んでるんですね」といい、奏のネクタイをつかみ「男の妄想、押し付けるのやめてもらえますか」と王子を突き飛ばし、「クソ王子」と言い捨て去っていく。このシーンには、王子を求めてこのドラマを観ているはずなのに、どこか胸がすく感覚も得た。これはなぜなのだろう。
考えるに、世の女性たちは、理想の王子像を過剰に提供されることを楽しみつつも、戸惑いも覚えているからではないだろうか。なぜなら、安易に女性はこういうものを提供すれば喜ぶんだろうという甘い見積もりを示されることは、女子はピンクが好きなんだろうということで安易に商品を作られることと同じくらいバカにされていると感じるからである。どんなピンクをどのような理由で求めているのか、消費者のひとりひとりを想像していないとき、それは「ダサピンク」と言われるのだ。
本作は、「王子」のすべてをちりばめながらも、その安易さを否定もしてくれる。しかも、14人もの王子がいることで、例えそれが分類されただけだったとしても多様であるから、安易な王子像を提供するのではないという意思も見えている。第1話の最後のヒロインの行動をみて、俄然このドラマに本気の興味が出てきた。
■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。
■放送情報
『PRINCE OF LEGEND』
日本テレビ系にて、毎週水曜深夜24:59〜25:29放送
出演:
【Team奏】
片寄涼太、飯島寛騎、塩野瑛久
【Team 京極兄弟】
鈴木伸之、川村壱馬
【Team 生徒会】
佐野玲於、関口メンディー
【Team ネクスト】
吉野北人、藤原樹、長谷川慎
【Team 先生】
町田啓太
【Team 3B】
清原翔、遠藤史也、こだまたいち
【Team 理事長】
加藤諒、大和孔太
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
企画プロデュース:植野浩之
プロデューサー : 佐藤俊之、森田美桜
脚本 : 松田裕子
監督:河合勇人
(c)「PRINCE OF LEGEND」製作委員会 (c)HI-AX ALL Rights Reserved.
公式サイト:prince-of-legend.jp
公式ツイッター:@PRINCELEGEND_PR
公式インスタグラム:prince.of.legend