“ギャグを感動に変える”脚本が見事! 『義母と娘のブルース』名台詞、名シーンの数々を振り返る

一気コールにハイタッチ。ささやかなネタを感動に変えるアレンジ力

 その上で、原作で登場したネタを別のシチュエーションで転用することで、より劇的効果を高めた点が、脚本家・森下佳子の功績のひとつ。たとえば、第2話。亡き前妻になり代わろうとコピーを演じる亜希子に対し、「それよりも履歴書にあったビジネスの経験を活かし明るく楽しい家庭をつくりたいって、あれをぜひ実践してください」と良一はアドバイスをする。そこで亜希子は、人参の苦手なみゆきに対し、「見てみたい、見てみたい、みゆきちゃんのいいとこ見てみたい」と営業部長らしく一気コールを仕掛ける。同様のネタは原作でも登場するが、原作ではあくまで数あるギャグのひとつ。だがドラマでは、母親としてのあり方を模索する亜希子の心情と重ねることで、母と娘の距離がほんの少し近づく印象的なシーンとなった。

 また、第8話で出てくる、亜希子と麦田の握手とハイタッチが何度やってもバラバラになるというネタも、原作のギャグのひとつ。しかし、森下はこれをただのギャグで終わらせなかった。リニュアールオープン初日、見事全商品完売を果たした亜希子と麦田が歓喜のハイタッチを一発で決めることで、ふたりの心が通い合った“象徴”として再活用。こうした伏線回収の巧さが、連続ドラマらしい爽快感と高揚感を生んだ。

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