すべての人にそれぞれの“サニー”がある 『SUNNY』が教えてくれる人生の楽しみ方
ルーズソックスにソックタッチ、ミニスカートにジャージ、109ブランドのショッパー、プリクラ帳、写ルンです、落書きした写真……“ああ懐かしい、あったあった!”と、1990年代終盤を女子高生として過ごした筆者にとって、忘れかけていた記憶の箱がいくつも開いた映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。小室哲哉ファミリーをはじめ、小沢健二やPUFFY、JUDY AND MARY、Charaらのヒットソングたち、『伊東家の食卓』の裏ワザ、ノストラダムスの大予言、『耳をすませば』の看板などなど、女子高生じゃなかった人にとっても、「あのころは……」と語りたくなる要素が随所に散りばめられていたのではないだろうか。
本作は、2012年に日本で公開された韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のリメイク作。オリジナル作品の舞台は、民主化運動が進んだ1980年代のソウルだ。若者たちが中心となって動かした韓国の変革期を背景に、女子高生たちの青春が描かれる。田舎から都会の女子高へと転校してきた主人公は、仲良しグループとかけがえのない日々を過ごす。しかし、ある事件をきっかけにメンバーはバラバラに。長い年月が経ち、すっかり連絡先もわからなくなっていたが、偶然リーダーと再会を果たす。そして末期がんに冒され死期が近いリーダーのために、かつてのメンバーを探し出すというストーリーだ。
『サニー 永遠の仲間たち』を観たとき、「あの時代のソウルってこんなに激しかったんだ」と驚いた。それと同時に「どこの教室もこんな感じなんだね」と共感せずにはいられない微笑ましさもあった。頭の固い先生がいて、愛情を真っ直ぐに表現できない同級生がいて、教室はいつもガヤガヤとうるさい。1990年代の東京に舞台を移してトレースした本作『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を観た若い世代も、もしかしたら同じように思うのかもしれない。奇抜なファッションに身を包んだエネルギッシュな当時の女子高生に「こんなに激しかったの?」という時代の違いと、そこに見える変わらない何かを。
きっと、その変わらないものとは、誰もが味わう“青春の苦味”なのではないだろうか。大人たちとは異なる価値観に揺れ、ファッションや音楽を背伸びして取り入れ、幼い恋はたいていうまくいかず、笑うのも、泣くのも、全力だったあのころ……というのは、きっとどの世代にも当てはまる青春のプロットだ。