『ハゲタカ』綾野剛は“日本の企業”を救うダークヒーロー? 平成最後の夏に蘇った理由

『ハゲタカ』綾野剛は“日本の企業”を救う?

渡部篤郎と沢尻エリカは敵か味方か

 鷲津と相対する関係にあるのが、渡部篤郎演じる芝野である。第1章では大手三葉銀行金融戦略部に勤め、膨大な不良債権が故に実施されたバルクセールで、その責任者を務めた。陰謀家である常務取締役の飯島(小林薫)から圧力をかけられるも、冷静な判断力と洞察力、企業の再生を最優先する誠実さも持ち合わせている。しかし、忙しさのあまりに家庭を顧みずにいたため、第1章で家族崩壊の危機に陥る。妻はアルコール中毒に、ひとり娘は、そんな両親にあきれ返り、まともに口も利こうとしない。

 また、沢尻エリカ演じるのは、老舗ホテル・日光みやびホテルを実家に持つ松平貴子。偶然鷲津と出会い短い会話を交わしたのち、当時働いていたホテルのロビーで再会を遂げる。鷲津相手に騒ぎ立てる客を、他の客に迷惑になるという理由で制する貴子。そのはっきりとした物言いと、相手をまっすぐに見る瞳の力からは、彼女もまた仕事にベストを尽くす女性であることが伝わってきた。その様子を見ていた鷲津も心動かされ、「多くの日本人が忘れてしまった確かな覚悟がある」と、貴子に一目置くことになるのだ。

仲間の裏切りと新たな敵の登場

 第2章に入るとさらに大きな展開が待ち受けていた。第1章では、鷲津の手により、三葉銀行の隠し口座の存在が明らかになり、それを仕切っていた飯島は失脚する。第2章はそれから時が進むこと9年、2010年代に突入する。

 芝野は三葉銀行を辞め、これまでの経験を生かして企業の再生担当の第一人者として名を馳せていた。様々な企業を再生させる一方で、その容赦ないリストラ措置に“首切り屋”とも揶揄されている。再生担当としてののやり方は、どこか鷲津を彷彿させるところがある。第2章では、総合電機メーカー・あけぼのの再生担当執行役員に就任。あけぼのの買収を計画していた鷲津がを警戒して保留にするなど、芝野も相当な強者としてのし上がってきたのだ。また、三葉銀行を辞めるとともに家族の仲も修復される。娘は社会人として企業で働くようになり、父の仕事にも理解を示し始める。また、芝野の支えもあって、妻もアルコール中毒から抜け出しつつある。

 一方、鷲津は変わらず、ホライズンジャパン・パートナーズの代表を務めていたのだが、第2章では、右腕であったはずのアラン・フジタ(池内博之)の裏切りによって、解雇されてしまう。2人の間では意見の食い違いが起こるも、鷲津は自分の判断を信じて押し通し、アメリカ本社の言いなりにならない。アランはそれに苛立ちと嫉妬心を覚え、第2章より新たに鷲津と敵対するPCメーカー・ファインTD社長・滝本誠一郎(高嶋政伸)と手を組んで、鷲津をビジネスの場からリタイアさせようとする。しかし、転んでもただでは起きない鷲津である。新たなファンドを立ち上げ、ホライズンジャパン・パートナーズの部下ら数人も合流することになった。

 本日放送の第5話では、一度は窮地に陥れられた鷲津がサムライファンドを立ち上げ、反撃をしかける。しかし、当然のごとくアランや滝本は、その行く手を阻もうとする。

 鷲津を陥れホライズンジャパン・パートナーズ現社長となったアランは、これまでに鷲津が手がけてきた企業の株式を次々と売却。また、同じくあけぼのの買収を企てている滝本も、後ろ盾となっているアメリカ大手の軍産ファンド、プラザ・グループと手を組んで動き始める。第2章では、鷲津と滝本の攻防が炸裂していきそうだ。

 『ハゲタカ』は、主演を大森南朋が務め2007年にNHKでドラマ化されている。設定などに違いを取り入れながら今再び新しく作られたのは、“平成最後の夏”という時勢もあってのことだろう。8月30日から始まる第3章では、原作者の真山仁の原案プロットをもとに、2018年を舞台にしたオリジナルストーリーが展開される。『ハゲタカ』は、世界に誇る日本の技術やその未来、そしてそれを守り継承する企業の役割を、あらためて考えるきっかけを与えるドラマである。

(文=若田悠希)

■放送情報
『ハゲタカ』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00〜放送
原作:真山仁『ハゲタカ』『ハゲタカII』(講談社文庫)
出演:綾野剛、渡部篤郎、沢尻エリカ、池内博之、木南晴夏、堀内敬子、佐倉絵麻、杉本哲太、光石研、小林薫
脚本:古家和尚
監督:和泉聖治
音楽:富貴晴美
主題歌:Mr.Children「SINGLES」(Toy’s Factory)
ゼネラルプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中川慎子(テレビ朝日)、下山潤(ジャンゴフィルム)
(c)テレビ朝日
公式サイト:http://www.tv-asahi.co.jp/hagetaka/

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