一度却下された企画が実現? 『絶対零度』プロデューサーが明かす、シリーズ3作目の誕生秘話

「“闇”の部分は色濃く出ている」

――シリーズ3作品を通して、『絶対零度』の軸として描かれているテーマは何でしょうか?

稲葉:伊藤淳史さん演じる東堂が、第1話で「未解決事件特命捜査では“過去”、特殊犯罪侵入捜査では“現在”、今回の未然犯罪潜入捜査では“未来”の犯罪を」と話している通り、シリーズ毎に時制のカテゴリーが進化しています。その中で共通しているテーマを挙げるなら、犯罪の根底にある憎しみやエゴや、犯罪から生まれる悲劇と、事件関係者や捜査官たち人間がどう向き合うのか、ということではないでしょうか。今回は捜査官たちそれぞれも過去の事件から心に闇を抱えているので、そうした“闇”の部分は色濃く出ていると思います。その分、暗くなりすぎないように、コミカルなシーンも盛り込むようにしています。

――今回、主演の沢村さんをはじめ、新しいキャラクターが登場していますね。

稲葉:キャラクターを自由に考えることができるというのが、オリジナルの良いところだと思っています。また、せっかく一緒にお仕事させていただく俳優さんたちなのですから、その方々の持つ魅力を最大限引き出したい、輝かせたい、という欲は常にあります。先ほど申し上げたように、沢村さんの井沢範人という役は「沢村さんの持つ魅力を最大限に引き出す」ことを目的に考えたものです。ひょうひょうとした沢村さんも魅力的なのですが、ダークサイドの顔も見たくなってしまった。その二つの顔を持つダークヒーローの主人公がどう受け止められるのか、楽しみでもあります。

――“ミハン”メンバーの紅一点、小田切唯を演じている本田翼さんのSっ気あるキャラクターも毎回話題になっています。

稲葉:本田さんは、僕が前に映画でご一緒したときに、「Sっぽい役どころが絶対に合う」と密かに思っていたんです。ご本人自体はいつもフワフワしていて優しい雰囲気をまとった方なのですが、なぜかそう思ってしまったんです。永井Pからは「稲葉さんがドMだからでは?」と言われています(笑)。また華奢な彼女がアクションをしたらギャップが生まれて面白いのでは? と考えました。ただ、普段運動をしない方なので、できるかどうか心配でもありました。ご本人も「できるかな~?」といった感じだったので(笑)。でも、アクションに挑む彼女の姿勢はとても真摯で、何時間もある練習も音を上げるどころか、真剣な表情で挑んでいます。今回の小田切という役を視聴者の皆さんに楽しく見ていただけてるならすごく嬉しいですし、それはひとえに本田さんの頑張りによるものだと思います。

――過去作から引き続き登場している上戸さんが演じる桜木は、本作の中ではどう描いていくのでしょうか。

稲葉:シーズン2のときはまだ新米クラスだった桜木も、あれから7年が経っているわけですから、かなり成長しているはずです。しかも年上の山内という“後輩”もできました。下ができると人は一段と成長したりしますが、桜木はまさにそれなのではないかと。それで今回は一流の捜査官になっている設定にしました。前のシリーズでは銃も持っていませんでしたが、今回第2話の回想シーンで、桜木の射撃を練習しているシーンを入れたり、成長して一流になった捜査官・桜木泉として、上戸さんにご出演いただいています。

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