全編わずか10カット 『ブッシュウィック-武装都市-』の“長回し”は、3本の映画を想起させる
『ザ・レイド』に通じる予算以上のビジュアル
『ザ・レイド』(11年)と言えばシラットを使ったド迫力の格闘映画だが、その続編『ザ・レイド GOKUDO』はカーチェイスシーンがあり、ここで驚異のカメラワークが確認できる。シラットで殴り合っている車の中から、それを追う別の車の運転席へカメラがワンカットで移動するのだが、これを人力でやっているのだ(詳細はthe raid 2 cameraでググると出てくる)。本作もそうしたド根性と工夫によって予算以上のビジュアルを成立させているのだろう。特にクライマックスの戦場と化した町は迫真の出来だ。力(と金)の入れどころの適切さには目を見張る。ちなみにXYZ Filmsは、武器と合体した武器人間が襲って来る『武器人間』(13年)、『ザ・レイド』のイコ・ウワイスがひたすら戦う『ヘッド・ショット』(16年)、謎の宗教にモンスターにと大盤振る舞いのオカルト・ホラー『ザ・ヴォイド 変異世界』(17年)や、ニコラス・ケイジの新たな代表作と評判の高い『Mandy(原題)』(18年)など、特殊な映画にばかり関わっており、注目の映画会社である。
『クローバーフィールド』的な発想に、『トゥモロー・ワールド』的なルックス。その豪華はコンセプトを低予算ながら『ザ・レイド』的ド根性と工夫で映像化した。『ブッシュウィック-武装都市-』はそういう映画である。全編10カットという実験的な構成と、社会的なメッセージ性、役者の力への信頼(バティスタは例によって激渋だ)、そして最後の最後の唖然とする展開も含めて、高い志を感じる1本だ。
■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。
■公開情報
『ブッシュウィック-武装都市-』
8月11日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督:ジョナサン・ミロ&カリー・マーニオン
出演:デイヴ・バウティスタ、ブリタニー・スノウ
配給:松竹メディア事業部
2017年/アメリカ/カラー/5.1ch/約94分/原題:Bushwick
(c)2016 STUPE PRODUCTIONS LLC.
公式サイト:bushwick-movie.com