田中圭のブレイク後押しした『おっさんずラブ』 放送後も衰えぬ人気の理由は“優しい世界”にあり
放送終了から約2カ月。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)人気が依然止まらない。8月7日発売の公式ブックは初版10万部でスタート突破。Blu-ray&DVDも予約開始と同時にテレ朝ショップのサーバーをダウンさせるなど、驚異的な反響を記録している。今回は“終わらない『おっさんずラブ』ブーム”を軸に、この熱狂の中心にあるものを探ってみたい。
『おっさんずラブ』に見る公式と民の相思相愛な関係
まず特筆すべきは、ネットでの高い反響だ。48万人以上のフォロワーを獲得した公式Instagram「武蔵の部屋」を筆頭に、本作は優れたSNS戦略によって支持層を拡大してきた。だが、今や各種SNSに公式アカウントを開設するのは、どのドラマでも常套手段。それだけではこの熱狂の説明はつかない。一体何が他のドラマとは違ったのだろうか。
ひとつは、制作サイドとファンの絶妙な距離感だ。『おっさんずラブ』のファンの間では、制作サイドのことを「公式」、ファンのことを「民」と呼んでいるが、この「公式」の愛され感が圧倒的なのだ。
その理由は、「公式」が「民」の背中を押し、「民」が「公式」の背中を押してきた歴史にある。『おっさんずラブ』は、人が人を好きになることをまっすぐ描いた王道恋愛ドラマだ。春田(田中圭)と牧(林遣都)が共に人間的成長を遂げながら想いを通わす純粋な姿に、多くの「民」が勇気づけられ、日常に彩りを得た。つまり「公式」が「民」の背中を押してくれたのだ。
一方で、視聴率という面では伸び悩み、当初はソフト化に関しても旗色が悪かった。これに今度は「民」が立ち上がった。視聴率だけでは数値化できない熱量を見せようと、熱いリクエストを直接局サイドに送る「民」が急増。現在、『おっさんずラブ』では、
・Blu-ray&DVD
・オリジナルサウンドトラック
・名言Tシャツ
・名言マフラータオル
・名言ミラー
・ネームバッジ
など様々なグッズ展開をしているが、同局深夜時間帯のドラマでこれだけ多彩なグッズが販売されたのは極めて異例。それもすべて「民」たちによる熱烈なラブコールがあってこそ。つまり、今度は「民」が「公式」の背中を押したのだ。
こうした相思相愛の歴史が、今なお続く熱狂の礎にある。「公式」もSNSの声をチェックしているようで、放送終了後も、本編のオンエア開始時刻であった土曜の23時15分に公式アカウントから重要なお知らせがツイートされるなど、「民」を喜ばせる気配りが満載。単に宣伝をツイートするだけでは、相思相愛の関係は生まれない。「公式」が自分たちの気持ちをわかってくれているという喜びと安心感が、SNS上に広がる『おっさんずラブ』ワールドの核にある。