“ミニシアターシネコン”はビジネスとして成立する UPLINK代表・浅井隆が語る、UPLINK吉祥寺の狙い

アップリンク吉祥寺の狙いは?

吉祥寺にオープンの構想は10年以上

ーー現在(7月15日)も4月6日に公開された『娼年』がアップリンク渋谷では上映されているなど、見逃してしまった映画がアップリンクに行けば必ず上映している印象です。アップリンク吉祥寺のオープンによって、さらに充実しそうですね。

浅井:ロードショー作品を上映する場合と旧作を上映する場合では、当然配給会社に支払う金額も変わってきます。さまざまな契約の形はありますが、基本的に名画座の場合は上映したい作品の素材を一週間5万~20万円で借りるレンタル代のみを配給会社に支払います。その期間は何回上映してもいいし、お客さんの数によって増減があるわけではなく、その間の売上はすべて映画館のものとなります。一方、ロードショー作品は、観客の動員数に応じて料金を配給会社に支払います。ミニシアター系作品だと大体50:50ですが、大手配給会社の場合、7割ほど支払うケースもある。アップリンクは、ロードショー館と名画座の間、いわゆる二番館の役割を担っています。この二番館としてのビジネスが、今まであるようでなかったんです。どうしても名画座はパッケージも発売されているようなタイミングになるので、公開から半年以上経ってからの上映がほとんど。ロードショー作品はデジタル化によって番組編成が容易になった分、上映作品の入れ替えが激しい。その結果、観たかったのに観ることができなかった作品が、映画ファンの中で多くなっている。そうした背景もあり、二番館としてアップリンクが求められている手応えはありますね。配給会社の方や監督にとっても、ロングラン上映で2ヶ月、3ヶ月と上映されていることを喜んでいただいています。

ーー去年から今年にかけての作品で言えば、『バーフバリ 王の凱旋』はかなりのロングラン上映を行っていました。

浅井:普通なら新宿ピカデリーなどの大きいスクリーンで観たい作品だと思うのですが、『バーフバリ』ファンの方は、アップリンクのような小さいスクリーンでもまた違った面白さがあると言ってくれています。同じ作品でも劇場を変えて初めて気づく楽しさがあるのかもしれません。

ーー2014年にバウスシアターが閉館した頃から、吉祥寺に映画館を作るという構想はあったのでしょうか?

浅井:バウスシアターが健在だったころでも、アップリンク配給の作品はなかなか上映してもらえていなかったので、吉祥寺に映画館を作りたいとは10年以上前から考えにありました。いくつか候補はありましたが、家賃の問題などで実現に至らず、今回パルコさんとの共同という形でやっと実現できました。

ーー満を持しての試みだったと。アップリンク渋谷もさまざまな工夫が施されていますが、吉祥寺はどんなテーマを掲げているんでしょうか?

浅井:シネコンなどの画一的な映画館のデザインと違った、デザイナーズミニシアターのイメージです。スクリーンごとに椅子の色や形を変えて、明確なコンセプトを作る予定です。もともと本屋さんが入っていたワンフロアをスケルトンにしての映画館作りですので、アップリンク渋谷よりは自由に設計ができるのかなと。音に関してもかなりこだわろうと思っています。先日、カンヌ国際映画祭の帰りにイタリア・フィレンツェに寄ってきました。フィレンツェにはアンプメーカーのPowerSoftの本社があるからです。「アンプ界のフェラーリ」と呼ばれているんですが、実際に視聴したところ音の質がこれまで使用していたものとは段違いでしたので車で言えばエンジンはPowerSoft。そしてタイヤに当たるスピーカーは、タグチクラフテックが開発した、振動体が平面となっているスピーカーをこの映画館用に開発してもらっています。

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