佐野玲於らがキラキラとした感情をまっすぐに差し出す 『虹色デイズ』に散りばめられた“17の特権”

『虹色デイズ』に散りばめれた“17の特権”

 男子同士の空気感、女子同士の空気感、男女友達の空気感、そして好きな相手と一対一で過ごす空気感……すべて同じ人物なのに、流れる空気がどこか違う。映画『虹色デイズ』は、そんなえも言われぬ雰囲気をスクリーンに映し出す。

 原作は、『別冊マーガレット』(集英社)に連載された水野美波の同名マンガ。少女マンガでありながら、主人公は男子高校生4人組。「これぞ男子」というおバカでお騒がせな高校生が、恋愛や友情と正面から向き合い“今”を駆け抜ける青春ストーリーだ。

 物語の中心となる、愛されキャラのなっちゃん役に佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、一見チャラいが友達思いのまっつん役に中川大志、アニメヲタクの秀才つよぽん役に高杉真宙、実はドSな恵ちゃん役に横浜流星と、今をときめく若手俳優を起用した万全の布陣。彼らが扮する4人の主人公たちは、性格も趣味も違うけれど、いつも一緒にいる仲良しな高校2年生。スクリーンのどこを見てもイケメンという幸福感はいわずもがな、オープニングからフルスロットルで描かれる、青春を謳歌する男子たちのワチャワチャ感の愛しさは、誰もが共感できることだろう。女子からするとそんな関係はうらやましくあるもので、 “イケてる男子グループ”に仲間入りできるような感覚が味わえることが、本作の魅力のひとつであることをまずは伝えておきたい。

 とはいえ、『虹色デイズ』は顔の良さとノリだけで突き進む物語ではない。劇中には「17の特権」という印象的なフレーズが登場するが、本当に高校時代にしかできない経験はたくさんある。そして、高校生だからこそ悩み、迷うことがある。全編を通して4人がそれらを体現しているのだが、なかでも注目したいのが表情の幅。若手とはいえ、演技に定評がある役者陣が揃っているため、実写作品にありがちな“不安定さ”はなく、各々が表情で言葉以上の心模様を見せてくれるのだ。

 それが冒頭で述べた“空気感”を作り出している所以ともいえるのだが、思わず「ふふっ」と笑ってしまうようなコンビネーションばっちりのツッコミをはじめ、それまで4人が作り上げてきた関係性がそこかしこに垣間見えるため、上映時間2時間弱とは思えない濃厚さがある。4人にはそれぞれが積み上げてきた友情の歴史があり、1コマ1コマが“映画のために作られたシーン”ではなく、“同じ時を過ごしてきた日々の一部を抜粋”したかのように思えてくるのだ。「この夏、男子だって本気で恋をする」というキャッチコピーから「恋愛モノ」というイメージがあってしかるべきだが、むしろ当たり前に時間を共有する仲間と過ごす、何気ない「いつもの毎日」が最大の見どころと言えるかもしれない。

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