池松壮亮×松居大悟監督『君が君で君だ』対談 気鋭の俳優と監督が追いかけた尾崎豊の姿

池松壮亮×松居大悟監督『君が君で君だ』対談

池松「ああいう瞬間に出会うたびに、なんで俳優になったんだろうと思います」

ーー作品の中では衝撃的なシーンがいくつもありました。特に池松さんが女性の下着姿で踊るシーン。あれはどのように演じられたのでしょうか?

池松:これ着てくださいって言われて……やっぱり、ああいう瞬間に出会うたびに、なんで俳優になったんだろうと思います。嫌ですよ。あんな姿を一応全国に晒すわけですから。

松居:あ、そう。恥ずかしかった?

池松:ええ。

松居:あ、すいません。

池松:2度とやりたくないです。

松居大悟

松居:すごい良いシーンなんですけどね。あのシーンあたりが、作品として伝わりやすいところだと思っています。「好きだ」とか「愛する」とかって、結局その人と一緒にいて、同じ時間を共有することが正しいとされているけれど、その人自身になりたいということも僕はあったので。そういう「愛する」形もある気がしていて。

池松:頷いていますけど、本当に分かるんですか?

ーー……いや。池松さんはどうでしょうか?

池松:僕は全く以って未だに理解できないんです。「同化したい」って思ったことありますか?

ーーいや、ないですね。

池松:ないですよね、異性ですよ。

松居:あ、そう?

池松:単純な憧れとかじゃなくてですよ。

ーー松居監督はなりたいと思ったことがありますか?

松居:(頷く)……いやいやいや、こんなこと言えないですよ。

池松:なんでさらっと言うかな。

松居:取材だからだよ。

松居「食べれないですかね。食べない?」

ーーもう一つ衝撃的だったのが、やっぱり髪の毛を食べるシーン。

松居:「同化したい」という行動の延長線上にあることで、その人になりたいということは、つまり、その人の全てを受け入れる。それは理解できるじゃないですか。その人だったら汚いものもきれいに見れるとか、その延長線上に「その人になりたい」があって、その人になりたいということは、「食べれる」でしょ。

池松:「食べれるでしょ」じゃないでしょ(笑)。食べないでしょ。

松居:食べれるんじゃないかな。

池松:「食べれるんじゃないかな」じゃないでしょ(笑)。

松居:すごい筋通ってると思ったんですが、通ってない? 食べれないですかね。食べない?

池松:食べないですよね。

松居:好きな人の髪の毛食べ……

ーーないですね。

松居:いやいやいや(笑)。閉じたな(笑)。

松居大悟 池松壮亮

ーー池松さんはそのシーンをどのような心境で演じていたんですか?

池松:本当の人毛ですからね。

松居:食用の毛を用意するかって言ったら「そんなのいらない」って言って。

池松:言ってないんですけどね。撮影前にリハーサルとか本の打ち合わせとかで議論する時間を作ってもらったんです。3日間くらい、白熱しすぎて朝になるみたいな日を松居さんと過ごしまして。この映画をどうするべきかとかという話をずっとしているんですけど、そのときにおそらく、夜中の本当に疲れた頃、松居組名物の助監督に「この髪の毛を食べるシーンどうされますか?」って聞かれて、僕が「食べれるやつじゃなくて、人毛でいいから、俺が人毛食ってやるから」って言っちゃったらしくて。でも、僕、絶対に言ってないと思っていて、現場で喧嘩になりましたね。

松居:言った言ってないの喧嘩でしたけどね。でも、そのときは現場にはもう食用の毛はなかったので。

池松:助監督に「あなたが食べるって言ったから人毛を用意しました」って言われて、「普通俳優にそんなことをやらせるなんておかしいです」って。

松居:いや、言ってたの。それは、俺も知ってる。

池松:キレましたね。

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