ブライアン・クランストンが考える“戦争と映画” 「映画はそもそも反戦的であるべきだと思う」

 

ーー3人が過去を噛み締めて来を目指す中で、本作には反戦のメッセージも静かに存在していましたね。

クランストン:映画はそもそも反戦的であるべきだと思う。実際、戦争を推奨する映画は思い浮かばない。この映画の注目すべきポイントは、世代を隔てても同じ軍隊生活を送っている点だと思う。20代であっても50代であってもその狭間の世代であっても代わり映えはしないね、制服は多少変わるけれど……。あと、この映画は男がどのように悲しみを抱え、触れ合い、旧交を温めるかを観察している作品だと思う。男同士の付き合いにはきっかけや共通項が必要で、ゴルフだったり、ビジネスだったり、何かしらの媒介が要る。対して女性は、気持ちひとつで友達と心を深く通わせることができるので、羨ましいし、尊敬する。男は回りくどい。「久しぶりに会いたいからランチに行こう」なんて言わずに、「今こんな面白い話があるからどうのとか、今こんな問題を抱えていてどうのとか、手伝ってくれないか、ゴルフをしないか、バスケやらないか」などとあれこれ口実を作り、そういうアクティビティーを通して、意見交換したり、触れ合ったりする。同じように映画の3人もドクの息子の遺体を届けるというタスクを通して触れ合っている。そのタスクがなければそもそも再会していない。男というものを正直に描いている映画だと思う。

ーー長い俳優生活を経て『ブレイキング・バッド』でブレイクしたあなたですが、もし30年前の自分に声を掛けるなら……?

クランストン:「もっと、いろんなことに挑め」と言いたいね。結果につながる確率はそんなに高くはないけれど、生活をしっかりと固めさえすれば、もっとリスクは取れるはず。新しい冒険を求めたらいいんだ。私も冒険してきたほうだけど、今振り返ると「あれもできたはず、やればよかった」と思うことがある。あと「深刻になりすぎちゃいけない」と言いたいね。20代は「家がどうの」とか物や財産に関してあれこれ心配しがちだけど、もっと人生を謳歌すべきだ。体力も回復力もエネルギーもたっぷりあるわけだから多いに利用するべきだよ。近頃の学生は、「卒業したらすぐ仕事に就いて、お金を稼がないと」と言うけれど、「そんなに焦らなくていいよ」と言いたい。もっと世界を探検するべきだし、異文化に触れるべき。それと本当にやりたいことを探るべき。「大学でXXを専攻して、4年間をそれに費やし、親も学費を出してくれたから、即刻その道に進むべき」と思いがちだけど、それで不幸になる人が多い。自分が専攻した分野をそのまま仕事に選んだ若者はそれなりに勉強をしたわけだから、ある程度の力を発揮するのだけど、「まあ悪くない」という程度の人生さ。私は、ある信条を抱えて俳優になった。「真に好きでなくとも得意なことを追求するのではなく、得意になるかも知れないという希望を抱きつつ真に好きなことを追求するんだ」。そう自分に約束したんだ。

(取材・文=阿部桜子)

■公開情報
『30年後の同窓会』
6月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
原作・脚本:ダリル・ポニックサン
出演:スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーン
主題歌:ボブ・ディラン「Not Dark Yet」
配給:ショウゲート
原題:Last Flag Flying/2017/アメリカ/カラー/ビスタ/125分/5.1chデジタル/字幕翻訳:稲田嵯裕里/主題歌翻訳:多摩ディラン
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公式サイト:http://30years-dousoukai.jp/

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