「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『リバースダイアリー』
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部の薩摩侍こと折田が、『リバースダイアリー』をプッシュします。
『リバースダイアリー』
小説家を志しながらもゴーストライターで生計を立てている男・白石理人は、風変わりな女優志望の女性・本田沙紀との奇妙な出会いを果たす。少しずつ距離を縮めていく2人だが、あるとき白石は彼女の日記から、その出会いが偶然ではなかったことを知る……。
物語について、あるいは登場人物について、つい勢いでキーボードを叩きたくなってしまうのだが、うっかりネタバレに触れてしまいかねない、非常に繊細な作品である。そんな本作の製作、脚本、監督、編集を手がけたのは、園田新だ。本作は国内外の10を超える映画祭に招待され、うち、最優秀作品賞や最優秀脚本賞など8つの賞を受賞。若い男女が出会うことによって彼らの日常が変質していくさまを、ラブストーリー、サスペンス、さらにはスリラーと、ジャンルを軽やかに横断しながら実に鮮やかな手腕で描き出している。
いや、“横断”というと少し語弊があるかもしれない。それらのジャンルはつねにまた別のジャンルを含んでいる。恋の駆け引きというものはそもそもサスペンスであるだろうし、歪んだ恋心がスリラーの誘引装置となることも多い。ここに出てくる人物たちの変質していく日常は、一歩先がまったく読めない。というのも、ラブストーリーがはじまったものだと思いきや、終始なぜだか不安感が拭えないのだ。その不安感の根拠は、ジャンルレスに観客を翻弄する脚本の妙もさることながら、画面内に周到に配置された、まさに「リバース」という言葉を象徴するような鏡の存在や、彼ら男女の視線の交錯劇といった細部にも宿っているように思える。
先述した『四月の永い夢』も趣向は違えど「喪失」を扱った作品であったが、あちらの作品にハマった方には、ぜひこの『リバースダイアリー』もマストな鑑賞をオススメしたい。別れと出会い、偶然と必然、ラブストーリーがはじまる“ドキドキ”と、それと平行して静かにサスペンスが進行していく“ドキドキ”。それらが織りなすドラマは、世界の終わりと始まりを同時に目撃してしまったような衝撃を与える。と、言えばちょっと大げさだろうか。いや、そんなことはない(と、言いたい……それほどまでに好きになってしまった)。しかし観る者の誰しもに、何かしらの引っかかりをもたらすことは間違いない。
■公開情報
『リバースダイアリー』
5月26日(土)ユーロスペースにて公開
製作・脚本・監督・編集:園田新
出演:小川ゲン、新井郁、小野まりえ、赤染萌、平吹正名、綱島恵里香
共同プロデューサー:小島英雄
撮影監督:トーマス・シュナイト
音楽監督:末廣健一郎
製作・配給・宣伝:CiNEAST
(c)CiNEAST
公式サイト:https://www.cineast.jp/reversediaries/