アメリカが抱える深刻な問題“隠れホームレス”の実態とは? 『フロリダ・プロジェクト』監督が語る

ーー劇中で、ムーニーやヘイリーがiPodでたくさん音楽を楽しんでいましたよね。Coca Vangoの「Yesterday」やRyan Oakes「HENNY IN MY SYSTEM」などヒップホップの楽曲がたくさん使われていましたが、選曲はどうやってされたのでしょうか?

ベイカー:ヒップホップを多く使ったのは、ブリア・ヴィネイトがよく聞いていたからだよ。この位の年齢の子供たちが聞いている音楽はなんだろうと考えて、ヴィネイトからの意見を取り入れて選んでいったんだ。いくつかの曲の権利を獲得するにあたって、ヴィネイトの知り合いを通して実現できたのも良かったね。

ーーブリア・ヴィネイトはInstagramで発掘したんですよね。

ベイカー:実は、ムーニー役のブルックリン・キンバリー・プリンスの方が女優としてのキャリアを持っていたくらいなんだ。最初は、経験のある女優をキャスティングする話が進んでいたんだけど、友人がたまたまInstagramで彼女の動画をリポストしていたのを目にした。彼女はカジュアルで、若さゆえの反骨心も見え隠れしていた。タトゥーを含めた鮮やかな体がこの世界にぴったりだったし、Instagramでも自分を表現していたからカメラの前で演技することへの自信も持っているのだろうと感じたんだ。それに彼女はニューヨークのアクセントで話すのだけれど、実際にフロリダで“隠れホームレス”になっている人はニューヨークやプエルトリコから引っ越してきた人が多くて、そういった意味でも理に叶っていた。でもキャスティングで何よりも大切なのは、モチベーションの高さと、作品を楽しめるか、必要な努力をする準備ができているかで、彼女にはそれらが全部揃っていた。『フロリダ・プロジェクト』は僕のこれまでの作品よりも多い製作費で撮っていて、通常ならばプロデューサーが未経験の女優に大きな役を当てることに抵抗するところなのだけど、すんなり承諾してくれたんだよね。本当にありがたかったよ。

(取材・文・写真=阿部桜子)

■公開情報
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』
5月12日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:ショーン・ベイカー
出演:ブルックリン・キンバリー・プリンス、ウィレム・デフォー、ブリア・ヴィネイト
提供:クロックワークス、アスミック・エース
配給:クロックワークス
2017年/アメリカ/カラー/DCP5.1ch/シネマスコープ/112分
(c)2017 Florida Project 2016, LLC.
公式サイト:floridaproject.net

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