北川景子、宮崎あおいと異なる“弱さ”の魅力 『西郷どん』篤姫役で新境地へ

 大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合)で、北川景子演じる篤姫と又吉直樹演じる13代将軍・徳川家定が心を通わせる場面が話題になり、キャスティングの妙に絶賛の声が寄せられている。篤姫といえば、2008年に宮崎あおいが大河ドラマ史上最年少の22歳で主演を務め、徳川家定を堺雅人が演じて強い印象を残している。

 本作で大河ドラマ初出演となる北川景子にとって、宮崎あおいが好演した篤姫を演じるということはプレッシャーもあったに違いない。しかし、そういった周囲からのプレッシャーをはねのけるほどの強さ、気品にあふれる演技を見せてくれている。

 2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』はタイトルの通り、動乱の幕末から明治期を生き抜いた女性、篤姫の視点で描かれた作品だ。そして、現在放送中の『西郷どん』の主役はもちろん鈴木亮平演じる西郷隆盛。そのなかで北川景子は西郷隆盛に大きな影響を与えた主君・島津斉彬(渡辺謙)の養女として、徳川家に嫁ぎ御台所となる女性を演じる。

 一橋慶喜を将軍継嗣にすべく、斉彬の密命を受けて徳川家定の正室となった篤姫。可憐な表情のなかにも強い意志を感じさせる宮崎あおいの篤姫は、「自らの意思で江戸へ赴き、自らの意思で父上様をお助けし、国の力となりたいと存じます」と、己の信じる道をまっすぐに進む筋の通った女性という印象を残した。

 一方、本作で描かれる篤姫は、はつらつとした華やかさのなかに弱さを併せ持つのが特徴的だ。病弱でうつけと噂される将軍とは世継ぎが望めないという事実を、島津斉彬(渡辺謙)から告げられる場面で、動揺を表しながらも篤姫は「すべては国のため、民のため、お父上のためなら、篤は喜んで不幸になります」と、けなげに語る。第5回で斉彬と西郷が相撲の取り組みを行った際は「行け西郷!」と男勝りで自由奔放な一面を見せていただけに、篤姫の成長と覚悟が垣間見えたシーンであった。

 婚儀をまとめるために奔走する西郷には己の弱さを見せ、はかない恋心も芽生えた。進むべき道がすでに整えられたなか、覚悟はしても時折ふと逃げ出したくなるその繊細さが、北川篤姫の魅力でもあり、多くの人が共感できる女性像になったように思う。うつけのような振る舞いはしていても心優しい徳川家定と心通わせていく様子は、その繊細さがより際立っていた。

関連記事