渡辺謙が鈴木亮平に伝えた“大河ドラマ主演”の覚悟 「迷うことなく恐れずに」
『「西郷どん」スペシャル ~鈴木亮平×渡辺謙の120日~』(NHK総合)が、4月1日に放送された。大河から世界へと飛び立った先輩俳優と、その先輩と格闘する主演俳優の舞台裏に密着した本番組。中身の濃い話をするため、今回の鈴木と渡辺の対談は打ち合わせなしで行われたという。
西郷吉之助を演じる鈴木と島津斉彬を演じる渡辺。吉之助を大きく成長させたのは、君主である斉彬との出会いがきっかけであった。吉之助にとって生涯の師であり“偉大なる父”・斉彬もまた、吉之助のまっすぐな心に惚れ込み、志を同じくする者として、強い絆で結ばれていく。2人は俳優の先輩、後輩としても舞台裏で絆を深めていく。渡辺は1987年に大河ドラマ『独眼竜政宗』(NHK総合)の主演に抜擢される。2人には「若くして大河ドラマの主役に抜擢された」という共通点がある。だからこそ、渡辺は鈴木は先輩として思いをぶつけ合いながら物語を紡いでいった。
世界遺産を持つ仙巌園、旧薩摩藩・島津家別邸で撮影されたのは、第5回「相撲じゃ!相撲じゃ!」での吉之助と斉彬との相撲シーン。2人が初めて対峙する御前相撲のシーンだ。実はこの場面、2人はぶっつけ本番で挑んでいた。提案したのは渡辺。現場でもほとんど言葉を交わすことなく、あえて距離を取ってきたという。渡辺は相撲のシーンに関して「俳優としてもちろん挨拶もしましたし、支度部屋でも会ったりするんですけど、手の内は見せないぞっていうか。こっから先は見えないっていうものにしておきたかったんですよね。男同士の、その先こいつがどこまでできるのか、こいつがどういう男なのかを肌身でも感じるというか。理屈抜きで試すという、そういうシーンにしたかった」と思いを明かす。
スタジオ対談では渡辺が「めちゃくちゃな組手だったよね。“かち上げ”からの“喉輪”か」と笑顔で振り返る。鈴木が「あれ、横綱が取る相撲じゃないですね」と返すと、渡辺も「俺、横綱じゃないもん!」と負けじと返答し、今だからこそ語れる場面に触れた。
撮影当日まで2人が距離を取っていた理由については渡辺が「あの日が本当に撮影上でも対面をし、声をかけるっていうは初めてのシーンだったんですよね。どういう距離感、関係性を西郷と築けるかっていうのは、やっぱこの作品の肝。まぁ、僕の役の肝だっていうふうに思っていたので、簡単には褒めないし、近くには寄せないよって。やっぱりその辺の距離感だったり、上下関係みたいなものを強烈に西郷にもそうだし、お客様にもそこから始まるんだっていうところを観てほしかった」とこのシーンにかける思いを熱弁した。また、久しぶりの2人の再会ということで、本来は吉之助が殿を前にむせび泣くというシーンだったのだが、「目も合わさないまま土俵に立たされて、そこで初めて殿が目が合うっていう、あの感覚は痺れましたね」と鈴木が明かす場面もあった。
大河ドラマの主役を全うするということには、渡辺が「俺たちは駅伝なわけよ。何人もこう『じゃあ、次頼むよ』つってタスキ渡していけるんだけど、西郷は1人で走んなきゃいけないからね。これからもいろんなプレッシャーやどうしていいんだろうというときがたくさんあるんだと思うんだけど。でも、それはね、1人で完走するやつは1人しかいないんだから、1年に。それはまぁ、なかなか楽しんでっていうわけにはいかないかもしれないけど、豊かな時間だと思うよ」と声をかけた。
一方の鈴木は、「今までこんなにアドバイスをくれる先輩に出会ったことがなくて、すごい今回それを感謝してるんです。ずっと謙さんの芝居を見てたんですよ、僕は」「僕の中で斉彬さんは謙さんであり、謙さんは斉彬さんであるっていう感じがずっとしてました、僕は。それが西郷さんとして、今何か自分の体現と、こう本当にリンクして進んでいけばいいのかなっていう感じがしています」と渡辺とともに歩んだ120日を振り返った。