山崎賢人がゲス男を演じる『トドメの接吻』は、ダーク版『花より男子』だった!?
日曜夜10時半からというニッチな時間帯を狙ったこの「日曜ドラマ枠」は、3年前の改編期、2015年4月に新設された。オリジナル作もあるが、主に『デスノート』や『臨床犯罪学者 火村英生の推理』などコミックや小説を原作に、若い視聴者がアニメ感覚で楽しめるフィクション性の高いドラマを放送してきた。『トドメの接吻』は『デスノート』の鈴木亜希乃プロデューサー(日テレ アックスオン)と脚本・いずみ吉紘が再び組んだもので(同作では山崎賢人が名探偵Lを演じていた)、『デスノート』の変奏曲的な作品とも言えるだろう。名前を書き込むと相手を死に追いやることができ、死ぬ時期や死ぬ前の行動を操れるデスノートと、宰子の死のキスは共に「死を利用するツール」として機能している。デスノート的な設定をうまく組み込んでドラマオリジナル作を作れたのは、この枠のスタイルが確立されてきた兆し。今年から来年にかけて、この枠からヒットが生まれるかもしれない。
そして、『花より男子』は折しも、その続編『花のち晴れ~花男 Next Season~』が4月クールのTBS系で放送されることが決定しているが(主演は杉咲花)、Windows 95以前の1992年に原作の連載が始まった『花男』の世界観が、今の若い視聴者層にフィットするのかというのは不安要素だ。現在は、誰でもスマートフォンを持ちインターネットで簡単につながることができるけれど、その人の本性までは分からない。旺太郎のように相手をだまそうとする人もいるかもしれない。そんな今の時代では、誰が誰を裏切るか分からない『トドメの接吻』の方が嘘っぽくなく感じられ、楽しめるのではないだろうか。性善説より性悪説の方がリアル。『花男』では男女の心が通じ合う瞬間として描かれたキスシーンが、ここでは恋愛感情抜きのリセット装置でしかなく、そのまま最後まで行くのかも気になるところ。いっそ、宰子のタイムリープ能力を狙って、イケメンたちが全員、唇を奪いに来るというダークサイド全開の展開になっても面白いけれど……。どこまで突き抜けられるか、それとも王道の恋愛路線に収まっていくのか、今後の放送を見守りたい。
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。
■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。
■放送情報
『トドメの接吻』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:山崎賢人、門脇麦、新田真剣佑、新木優子、佐野勇斗、宮沢氷魚、堀田茜、唐田えりか、山本亜依、志尊淳、菅田将暉
脚本:いずみ吉紘
音楽:Ken Arai
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:鈴木亜希乃、渡邉浩仁、岡宅真由美
演出:菅原伸太郎、明石広人
(c)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/todomenokiss/index.html