ムロツヨシが向井理の誤算に? 『きみが心に棲みついた』呪縛から逃れられない登場人物たち

 そう、環境は人にクセを作る。「私なんか」とつい口をついてしまうキョドコも、「キョドコのくせに」とネクタイを緩める星名も、ついキョドコからのメールをチェックする吉崎も、堀田と比べられると火がつく八木も、自分のあざとさを自覚しているからキョドコを「卑怯だ」と感じる飯田(石橋杏奈)も……それぞれが過去の環境や経験からクセができ、そのクセが知らず知らずに定着していく。多くの人が抱えるクセを“普通”と呼んだり、少数派のクセを“変だ”と言ったりもする。きっとスズキも、キョドコと同様に“変な人”というレッテルを貼られてきたのだろう。その感度が高いがゆえに、キョドコがどう変わっていくのか、そもそも変われるのか、なぜそんなクセが強くなってしまったのか、と興味をそそられるのかもしれない。

 その感覚は、限りなく視聴者に近い。キョドコを通じて人は変わることができるのか、それとも別の幸せを見つけられるのかを見てみたいのだ。誰もが、少なからずそれぞれのクセを持っている。もしかしたら、そのクセを自分も周りも受け入れられたとき、はじめて“その人らしさ”となるのかもしれない。なぜなら、ムロツヨシが演じるスズキはクセがだいぶ強い。だが、それがムロツヨシらしさであり、私たちはその様子を愛しく思う。ムロツヨシの演技そのものが、このドラマのひとつの答えを見せてくれているような気がする。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
TBS火曜ドラマ『きみが心に棲みついた』
毎週火曜22:00〜放送
出演:吉岡里帆、桐谷健太、石橋杏奈、ムロツヨシ、鈴木紗理奈、瀬戸朝香、向井理
原作:天堂きりん「きみが心に棲みついた」「きみが心に棲みついたS」(祥伝社フィールコミックス)
脚本:吉澤智子、徳尾浩司
プロデューサー:佐藤敦司(ドリマックス・テレビジョン)
演出:福田亮介(ドリマックス・テレビジョン)
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/kimisumi/

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