石井杏奈が語る、河瀬直美監督と山田孝之から得たもの「捨てることで強くなる」
「素の自分で挑んでみて、初めて分かることがある」
ーー印象に残っているセリフなどはありましたか。
石井:2日間の撮影が濃すぎて、自分が自分じゃない感覚があったんです。だから、「セリフとして喋った」という感覚がなくて。これだ!というのはないのですが、逆にすべてが印象に残っていると言えるかもしれません。高木くんと真矢として生きていたのかなって。
ーー真矢が踊るダンスも石井さんのオリジナル?
石井:ダンスは一条高校のダンス部が披露していたものを、一緒に覚えて映画の中に取り込ませていただきました。
ーーあのダンスシーンを観ていると、役者・石井杏奈であると同時にE-girlsの石井杏奈でもある、ということを改めて感じました。そして、光に包まれた石井さんがとても素敵で。ご自身で完成した映像を観ていかがでしたか。
石井:踊っているときはどう撮られているかは考えていないのですが、どこか太陽が味方をしてくれている感じがあったんです。それがちゃんと映像にも反映されて、すごくキレイな映像でびっくりしました。
ーー約15分間の作品ですが、紛れもない映画作品になっていると感じます。『CINEMA FIGHTERS』という企画自体に関してはどう思っていますか。
石井:小竹(正人)さんの歌詞がすごく好きなので、この企画は本当にうれしかったです。もともと、曲を聴きながら、映画のような一場面がフッと浮かんでしまう歌詞だと思っていたので、それがプロの監督たちの手によって実現するなんて夢みたいで。きっと出演していなくても、楽しみにしていた作品だったのに、そこに演者として出演できると聞いたときは倍のうれしさがありました。
ーー改めて、河瀬さん、山田さんとひとつの作品を一緒に作って、ご自身の中で変化はありましたか。
石井:“強くなること”、その点に関して成長できたのかなと思います。山田さんだから緊張する、河瀬監督だからこうしないといけない、というのではなくて、そういう固定観念を全部“捨てる”こと。そして捨てることが強くなることなんだなって。取り繕っても、信頼は得られないですし、怖がらずに自分の素を見せなくては誰も評価してくれない。仮に素を見せずに評価されてもそれはうれしくない、それは今回の撮影を経験して感じたことでした。もし、恥ずかしくても、できなくても、素の自分で挑んでみて、初めて分かることがある。素でぶつかってこそ、その後にいただくアドバイスに価値があると学びました。今年で20歳にもなり、大人に近づくにつれて、繕ってしまうことは増えてくると思うのですが、それでも素直さや正直さを忘れたくないと、本作を通して強く実感できました。
※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記
(取材・文:石井達也/写真:伊藤惇)
■公開情報
『CINEMA FIGHTERS』
全国公開中
出演:山田孝之、石井杏奈、 AKIRA (EXILE)、鈴木伸之、
町田啓太、岩田剛典、 Dream Ami、玄理
監督:河瀬直美『パラレルワールド』、A.T.『キモチラボの解法』、萩原健太郎『Snowman』、齋藤俊道『色のない洋服店』、常盤司郎『終着の場所』、落合賢『SWAN SONG』
配給:LDH PICTURES
上映時間:94分(全6作品)
(c)2017 CINEMA FIGHTERS