『わろてんか』折り返し地点でさらに面白く てんたちの奮闘が描く、近代芸能史の輪郭
一方で面白いのは、高橋一生が演じる伊能栞の存在だ。伊能は活動写真(映画)の会社をやっているのだが、いわゆる寄席というライブカルチャーに対して映画という映像文化の隆盛がすでに目の前に迫っていることが、伊能の会社の成長によってわかるのだ。
今後はラジオやテレビといった新しいメディアとの関わり、そして太平洋戦争に向かっていく物語が描かれるのだろう。過去の芸能の話ではあるが、テレビを中心に全てが回っていた芸能界の構造が崩れて、インターネットとライブカルチャーを軸としたお笑い芸人や地下アイドル、あるいはユーチューバーのような今までとは違うタイプの芸能が勃興してきている状況と実は似ているのかもしれない。
最後に、本作の軽さを欠点と感じる人もいるかもしれないが、「笑い」を描く上では美点だと思っている。むしろ、気になるのはドラマの軽さに対して映像が重すぎることだ。
『カーネーション』あたりから朝ドラの映像も年々、豪華で実験的になってきていて、それは物語の重厚さや複雑なことを表現する場合は良いのだが、本作ではむしろ邪魔に感じる。どうも脚本の狙いと演出の意図が噛み合っていないように見えるのが、本作の惜しいところだ。個人的には『わろてんか』は吉本新喜劇でやるべきだと思う。ベタなストーリーもその方が生きるはずだ。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『わろてんか』
出演:葵わかな、松坂桃李、濱田岳、広瀬アリス、大野拓朗、徳永えり、波岡一喜、藤井隆、内場勝則・高橋一生、鈴木保奈美ほか
作:吉田智子
音楽:横山克
平成29年10月2日(月)~平成30年3月31日(土)全151回(予定)
<総合>
(月~土)午前8時~8時15分/午後0時45分~1時[再]
<BSプレミアム>
(月~土)午前7時30分~7時45分/午後11時~11時15分[再]
(土) 午前9時30分~11時[1週間分]
写真提供=NHK
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/warotenka/