瀬戸さおり、オールヌードで挑んだ『愛の病』を語る 「私自身にも気づいていない闇の部分がある」

 女優・瀬戸さおりにとって、初主演映画となる『愛の病』での演技は、その役者人生を大きく揺さぶるほど、濃密な経験となった。【※インタビュー最後にチェキプレゼントあり】

「誰でも心の内側には深い闇を抱えていて、その形は人それぞれ違い、いつ表出するかもわからないと思うんです。『愛の病』の主人公・エミコを演じて、私自身にも気づいていない闇の部分があることを知りました。また、演技を通して他人の人生を生きるのは、こんなにも辛いものなのだと、身をもって知ることができたと思います。撮影中は、もっとエミコの心境に寄り添って、自分も苦しまなければいけないと、常に戦っていました」

 『愛の病』は、主犯格の女が出会い系サイトで知り合った男を騙して大金を貢がせた末、男に強盗殺人をするよう仕向けて1人を殺害、1人に重傷を負わせた2002年の事件「和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件」をもとにした実録サスペンス。生活費を稼ぐために出会い系サイトのサクラとして働きながら、工員の真之助に貢がせる日々を過ごすエミコが、一目惚れした解体作業員のアキラに重度の障がいを持つ姉・香澄がいることを知り、真之助を利用して香澄を殺害しようとする物語だ。

「この映画のお話をいただいた時に、私は初めて事件のことを知りました。いったいなぜ出会い系で知り合った見知らぬ男女が、一緒に殺人という罪を犯すまでに至るのか、その過程に興味が湧きました。正直なところ、エミコという女性が何を考えているのか、はじめは全然理解できなかったですし、怖いとも思いましたが、だからこそ役者として彼女にどこまで近づけるのか、挑戦してみたくなったんです」

 
 エミコという強烈な女性を演じるにあたって、瀬戸は髪を真っ赤に染めて、タバコを吸い、役作りに励んだ。

「エミコのキャラクター設定を見て、1番最初に目に飛び込んできたのが、“ヤンキー風”と書かれている言葉でした。私の地元は、まだ昔ながらのヤンキーファッションの女性もいるんですが、エミコという人物を作り上げる上で、彼女たちの立ち振る舞いやファッションは参考にしました。外見的に一番こだわったのはヘアースタイルですね。しばらく染めていない髪質で、周りから見るとあんまりイケていないのに、自分的にはすごくイケていると思っている感じを強調したかったんです。赤色にしたのは、『エミコだったらきっと金髪じゃなくて赤髪だろうな』っていう直感的なインスピレーションだったのですが、後から調べてみると、赤という色のイメージには、強い情熱とかエネルギーのほかに、血とか地獄といった意味もあって、なるほどエミコにはぴったりだなと思いました」

 撮影が進み、エミコとして日々を過ごしていくうちに、瀬戸は役に引っ張られて、「普段の口調とか、ものの扱いとかも乱暴になった」と、友人たちから指摘されることもあったそう。しかし、そうして役に寄り添う努力をした結果として、瀬戸は徐々にエミコという人物の内面を理解していく。

「孤独を抱えた人物だと思います。親からちゃんと愛情を注がれてこなかったので、愛され方も知らないし、愛し方も知らない女の子なんです。自分が世間から認められていない存在だと感じていて、それが粗野で行き当たりばったりな行動に繋がっている。だけど、本当は心の底から愛情を求めていて、もし誰かが彼女をちゃんと愛してあげたら、事件を起こしたりはしなかったのかなと思います。娘に対しても、ぶっきらぼうに見えて本当は愛情を抱いているはずなんです。ひとりの女性として彼女の気持ちは理解できますし、もし彼女と同じような境遇に陥ったとしたら、私もまた過ちを犯してしまうのかもしれないと感じました」

 愛情に飢えたエミコは、出会い系サイトで真面目な工員・真之助と知り合い、その純朴さを利用して金を騙し取り、意のままに操ろうとする。真之助を演じた岡山天音との衝撃的な演技合戦も、本作の大きな見どころだ。

「真之助はものすごくピュアな男性だけれど、盲目的でエミコのためならどんな行動でも喜んでしてしまう。岡山くんは、ものすごく体当たりで真之助を演じていて、エミコとして、私ももっと虐めてやろうという気持ちが湧いてきました。現場に入る前に、考えていった演技プランはあったのですが、岡山くんが思いっきりぶつかってきてくださったので、それに対してこちらも思いっきりぶつかっていったところ、想像以上にインパクトのあるシーンになっていると思います。エミコも真之助も、おたがいに屈折した愛情を抱えていて、そんな二人だからこそ宿命的に結びついてしまうんだと思います」

 そして、アキラを演じた八木将康とは、濃密なラブシーンにも挑んでいる。小柄で華奢な瀬戸が果敢にもオールヌードになり、貪るようにアキラの身体を求める姿は、かなり刺激的だ。

「ただただエミコとして、アキラを愛するだけでした。緊張や恥ずかしさよりも、アキラのことが大好きだっていう気持ちが勝りました。ほかにはなにも考えられないくらいアキラのことを想い、撮影中のことは夢中になりすぎて覚えていないほどです。八木将康さんも本気で向き合ってくださったので、私もエミコとしてぶつかることができたのかなと思います。今回は、共演させていただく役者さんに引き出していただいた部分も、とても多かったです」

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