高橋一生は“サポート役”で活きる俳優だ 『民衆の敵』藤堂役で見せる“情”
最初のうちは、シングルマザーの貧困や、待機児童問題、商店街の衰退などの身近な問題が描かれていた『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』。しかし後半では前市長の汚職によりヒロインの佐藤智子(篠原涼子)が市長となり、政治を裏で牛耳る犬崎(古田新太)との対決が描かれている。
後半ではシリアスなシーンも多くなったが、最初はカメラに向けて登場人物が語りかける演出などあり、少しそこにのりきれないところもあった。ただそれも、政治を題材にしたドラマを親しみやすくしたいという、製作者たちの意気込みであろうことは理解できる。
また、ヒロインがごく普通の主婦であり、そんな女性が市長として孤軍奮闘しているというギャップを出すために、政治に対してまったく知識がないという風に描かれていた。彼女は普通の主婦だからこそ、正義や善悪に対してはピュアなキャラクターであると強調したいのもわかる。しかし、昨今のドラマを見ていても、ヒロインの天真爛漫さや、ちょっとおバカなところを強調したキャラクターが共感につながるとも思えないところがある。
人気の高橋一生は政治家の藤堂という役を演じている。ある日隠れ家のように使っているボロアパートの別の部屋にデリヘルの仕事でやってきた莉子(今田美桜)が、雨に濡れてふらついていた藤堂を助けたことで交流が始まり(ドラマを見ている限りでは、仕事として呼んで関係を続けていることが見てとれる)、政治家として日々緊張感のある毎日を過ごしている藤堂のある種の癒しの時間となっているのが見てとれた。このシーンで、高橋一生の裸のショットが多いために、喜ぶ視聴者もいれば、あからさまなサービスと思われる演出に「これではない」と思う人もいたようだった。
個人的には、こうした視聴者のことを過度に意識したドラマの作りにも、やはり最初は少しのりきれないところがあった。だが、後半にきて、ヒロインも天真爛漫なだけではやっていけない状況が描かれるようになってからは、ぐいぐい引き込まれるようになった。
と同時に、最初は上半身裸でセクシーな場面が見どころになっていた藤堂のキャラクターにも変化がみられるようになった。
冷静沈着で、でもあくまでも家業として政治家を継いだだけの二世議員であることにどこか負い目を持っているような複雑なキャラクターであった藤堂だが、佐藤智子と共に仕事をするうちに変化していくのが見て取れる。
高橋一生が飛躍した作品を何でとらえるかは人それぞれだと思うが、例えば『民王』などがあった2015年あたりは、秘書などのサポート役、男女問わず誰かを支える姿にも定評があったと思う。