『奥様は、取り扱い注意』『監獄のお姫さま』……女性目線ドラマに変化 関心は恋愛から社会へ?

 秋クールのドラマもいよいよ中盤へ。各作品とも物語も大きく動き始め、クライマックスに向け盛り上がってくる段階に入った。最新の視聴率経過(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を見ると、今作で第5シーズンに入った『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)が平均視聴率20%と独走状態。2位は『相棒 Season6』(テレビ朝日系)が安定の15.5%と、人気シリーズ2作が盤石ぶりを見せつける形に。3位には15.0%で『陸王』(TBS系)が続く。固定ファンのいるシリーズものと、人気作家が原作を手掛けた品質保証済みの作品。『カルテット』(TBS系)や『過保護のカホコ』(日本テレビ系)といった実験的な作品がヒットを放った2017年のTVドラマ界を振り返るにつけ、やや地味な印象があるのも確かだ。

 しかし、その一方で、今期特に顕著なのが女性、特に30代以降の女性を主人公に据えた作品の増加だ。中卒の市議会議員の奮闘を描く『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(フジテレビ系)、無実の罪で投獄中の“姫”を救うため、元囚人らが事件の真相を暴いていく『監獄のお姫さま』(TBS系)、某国の諜報員だった過去を持つ主婦の世直し劇『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)、スキャンダルによって死に追いやられた夫のために復讐を決意する妻が主人公の『ブラックリベンジ』(読売テレビ・日本テレビ系)など、かつて例のないほど主婦目線、女性目線の作品がチャンネルを賑わせている。産科医療の現場でさまざまな事情を抱えた母親らが登場する『コウノドリ』(TBS系)や、物語の裏テーマに“毒親”を据えた『明日の約束』(関西テレビ・フジテレビ系)も、ある意味女性目線の作品と呼んでも過言ではないだろう。

 では、なぜこういった傾向が生まれたのか。

 まずひとつに主な視聴者層がある。TVドラマ(特に平日ゴールデンタイムの作品)といえば、いわゆるF1層(20歳から34歳までの女性)とかF2層(35歳から49歳までの女性)をターゲットとするのが定石。となれば、視聴者層に合ったテーマや主演俳優を選ぶのは当然といえば当然だ。しかしそんな中でも不思議なのは、過去にあれだけ乱立していた恋愛もの、不倫ものがほとんど姿を消してしまっていること。長い間、“女性の関心事といえば恋愛”という価値観がF1層/F2層を狙った市場を支えてきた。ゆえに、恋愛ドラマが数多く制作されてきたわけだが、今期の状況を見ると、そんな設定にも揺らぎが起こっていると考えることもできる。 

『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(C)フジテレビ

 その証拠が、先に挙げたタイトルが社会問題や世相を扱っている点だ。例えば、『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?』は非正規雇用世帯や市民の政治参加を、『奥様は、取り扱い注意』ではさまざまなご近所トラブルが扱われている。『監獄のお姫さま』にいたってはストレートではないながらも、男性VS女性の構造を中年女性の視点から描いているし、『ブラックリベンジ』は“ゲス不倫”や“文春砲”など世間を騒がせている過激な週刊誌報道をモチーフとしている。“恋愛”からより身近な暮らしや社会へ。女性たちの興味の移り変わりを、制作サイドは敏感に察知したのかもしれない。

『監獄のお姫さま』(C)TBS

 もちろん、たまたま特徴を同じくする作品が揃っただけという見方もある。しかし少なくとも、企画の段階で世の流れにコミットする、よりリアリティを与えるドラマ作りを目指したのは確か。その中で、女性の目線で語ることが選ばれたのは偶然ではないはずだ。不満もストレスも一向になくならない毎日、甘々な恋愛ドラマのような安易なファンタジーではない“癒し”なり“カンフル剤”を生み出したいという制作側の意図が今期の傾向からは感じられるのだ。

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