『サラリーマン山崎シゲル』著者が語る、“違和感”の描き方 「普通の人がおかしな行動をした方が面白い」

 「なぜ面白いのか、はっきりしないものを作りたい」

——新刊では、「50音」を2週する、まさに大喜利的な一コマが面白かったです。こちらのインスピレーションの源は?

田中:これまで描いてきた中でサラリーマンの日常にありそうなことを上げ尽くしてしまった部分がありました。自分がサラリーマンとして働いたこともないので、ネタとしてそろそろ限界かなと。で、無理くりお題を作れるように50音でやってみたという感じです。

——例えば、「ち」の「力こぶ」は、「力こぶに薄焼き卵をかぶせるのが世界一上手いんです」という、とってもシュールなネタで面白かったのですが、どういった創作の経緯があったんですか。

田中:薄焼き卵を乗せたら温かいのかな、冷たいのかなと思ったのがきっかけで(笑)。なぜ面白いのかはっきりしないものが作りたいなと思っているんです。

——田中さんの作品を読んでいると、“観察者”として、映画やドラマなども多く観られているのかなと感じました。

田中:いや、そんなに映画などは観ていないんです。一緒にお仕事をする方との会話だったり、日常にありふれているギミックを細かく考えたりがネタの中心ですね。きっと、いろんな作品をちゃんと観ていたら、お笑いでも成功できていたかもしれません(笑)。

——ギャグ漫画や一コマ漫画はどこか平面的な絵になるイメージがあるのですが、田中さんの絵は、山崎と部長の“アクション”があるからなのか、非常に立体的に感じます。

『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』より

田中:それも無意識だと思うのですが、芸大時代に延々と空き缶のデッサンなどをやっていたのが活きているのかもしれません。その意味では、芸大で頑張った時間も、お笑い芸人として努力した時間も、どっちもあったからこそ、描くことができているのかなと思います。

——改めて新刊について聞きたいのですが、副題を「Love&Peace」にしたのはどんな経緯が?

田中:えーと、これは……特に意味はないんです(笑)。編集者の清水さんと相談しながら『サラリーマン山崎シゲル』はやらせていただいているのですが、「〜巻」とはしたくないよな、とお互い言っていて。シリーズの2冊目も副題は「~THE SWORD OF GALAXY~」で、今回も「Love&Peace」である必要性はないんです。

——でも、このサブタイトルのもと、山崎と部長が繰り広げる“日常”こそが、どこか不穏な空気が流れる現在を笑い飛ばしてくれるものになっているのかなと。

田中:それでいきます(笑)。これからも何があっても毎日書き続けていきたいと思っているので、「こいつアホやな、こいつ何を考えてるだ」と読者に思っていただければ何よりです。

(取材・文=石井達也)

■販売情報
『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』発売中
著者:田中光
発売元:株式会社ポニーキャニオン
価格:900円+税

■『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』発売記念・田中光サイン会
11月18日(土)13:00~熊本・蔦屋書店 熊本三年坂店
11月18日(土)19:00~福岡・六本松 蔦谷書店
11月19日(日)15:00~長崎・TSUTAYA BOOK STOREさせぼ五番街店
※参加方法等の詳細は店舗にて

 

関連記事