北村匠海、10代最後に見せる“輝き” 『恋と嘘』献身的なヒーロー役に注目

北村匠海、『恋と嘘』の献身的な演技

 クールな目元に愛嬌ある笑顔。北村匠海という俳優の大きな特徴の1つに、「声」が挙げられると思う。優しく柔らかく、すーっと聞くものの耳に届くその美しい音色は、どこか儚げでもある。妙な自己主張や、くどさのないこの儚げな「声」は本作でも活かされていた。先述した別れの場面での「じゃあね」や、森川の優柔不断さに向けた「ゆっくりでいいよ」。それらたったひと言だけで、司馬というキャラクターの、ひいては『恋と嘘』という作品における北村自身の、それぞれ立ち位置をあっさり確立してしまっていた。司馬としては葵が幸せになるために。北村としてはあくまで脇から、ヒロインである森川を立てるために。まさに“一歩引いた”献身的な演技である。 

(c)2017「恋と嘘」製作委員会 (c)ムサヲ/講談社

 本作の司馬役で見せる献身的な演技とキャラクターは、北村自身の作品に対する姿勢とそのまま重なるのだ。いよいよ20歳になるこの2017年は、綿矢りさ原作小説の映画化『勝手にふるえてろ』の公開も控えている。北村は今後ますます、前述した幼少期時代を演じてきた俳優たちのような、作品の中の軸となる役を演じる俳優になっていくだろう。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『恋と嘘』
公開中
出演:森川葵、北村匠海、佐藤寛太、浅川梨奈、田辺桃子、遠藤章造、眞島秀和、温水洋一、中島ひろ子、三浦理恵子、木下ほうか、徳井義実
監督:古澤健
脚本:吉田恵里香
原作:『恋と嘘』ムサヲ(講談社)
主題歌:阪本奨悟「HELLO」(A-Sketch)
制作プロダクション:The icon
配給:ショウゲート
(c)2017「恋と嘘」製作委員会 (c)ムサヲ/講談社
公式サイト:koiuso.jp

『君の膵臓をたべたい』
公開中
原作:住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社刊)
監督:月川翔
脚本:吉田智子
音楽:松谷卓
追加編曲:伊藤ゴロー
出演:浜辺美波、北村匠海、大友花恋、矢本悠馬、桜田通、森下大地、北川景子、小栗旬
(c)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社
公式サイト:kimisui.jp

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